米カリフォルニア州、個人請負人の従業員分類でライドシェア以外の業界への影響も懸念(米国) (9/27)

米カリフォルニア州、個人請負人の従業員分類でライドシェア以外の業界への影響も懸念(米国)
ロサンゼルス発
https://www.jetro.go.jp/biznews/2019/09/5626296d4d49b079.html
Jetro 2019年09月27日

米国カリフォルニア州で9月19日、従業員と個人請負人(インディペンデント・コントラクター)の分類基準を示す州法が成立した。ウーバーやリフトなどライドシェアサービスの運転手が従業員扱いとなる可能性に注目が集まるが(2019年9月13日記事参照)、運送会社やヘルスケア業界など他の産業への影響も懸念されている。

ギャビン・ニューサム知事は州法署名時に、「この法律は重要なステップだ。次のステップは、柔軟性と革新性を維持しながら、より多くの労働者が労働組合を組織し、より多くの収入を得るために交渉し、職場でより強力な発言権を持つ道を作ることだ」とのメッセージを出した。

「ウォールストリート・ジャーナル」紙(電子版9月21日)は、賃金や福利厚生面の改善を求める運転手と、休憩時間を含めフレキシブルな働き方を希望する運転手によって、州法の評価・影響は分かれると報じた。また、ウーバーの運転手20万人以上とリフトの運転手32万5,000人などが従業員として扱われる可能性がある中で、両社が州政府を交えた今後の交渉を行う前に、運転手の最低賃金を21ドルに改善する提案をしたと伝えている。

CBSニュース(電子版9月13日)では、ウーバーや食料配達サービスのドアダッシュなどで働くギグワーカー(注)が40万人いる一方、州には150万人のフリーランス労働者がおり、運送会社や新聞社、清掃業者、ソフトウェア会社はフリーランス労働者を引き続き個人請負人と合法的に定義することが難しいかもしれないと伝えている。

カリフォルニアトラッキング協会のショーン・ヤドン最高経営責任者(CEO)は19日、ABC10ニュースのインタビューで、数千人のトラック運転手が独立した立場を脅かされることを懸念しており、事業のために他州に移ることを検討している者もいると語った。また、トラック輸送は年間を通じて需要の増減があるため柔軟性が必要で、テック業界とは根本的に異なり、(インターネットを通して単発で仕事を行う)「ギグ・エコノミー」ではないと述べた。

また、ヘルスケア業界向け情報サイトMEDPAGE TODAY(9月20日)は、州の免許を持つ医師、外科医、歯科医、足病医、心理学者、獣医、弁護士、建築家、エンジニア、私立探偵、会計士、漁師などの職業は適用除外になる一方で、「看護師、在宅医療助手、ホスピス労働者、言語療法士、その他の多くの臨床医には言及されていない」ことを紹介し、条文上の解釈判断を要する場合があると伝えている。また、個人請負人を従業員と分類して雇用する場合、年齢が上がれば健康保険料と社会保障費の負担がより高くなるため、より若いあるいは他州の労働者との比較で、企業による年齢差別が起きる懸念を指摘している。

従来、個人請負人と分類されることの多い翻訳者・通訳者や音楽業界などへの影響を懸念する報道も出ており、成立直後の現時点では多方面への影響を見づらい状況だ。

(注)空き時間などを利用して単発の仕事を行う労働者。

(北條隆)

(米国)

ビジネス短信 5626296d4d49b079 

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