「アマゾン」のブラックぶりは他人事ではない!?スピード配送で犠牲になる人々 (1/1)

「アマゾン」のブラックぶりは他人事ではない!?スピード配送で犠牲になる人々
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2020/1/1(水) 18:45配信 LIMO〈Life and Money〉

「アマゾン」のブラックぶりは他人事ではない!?スピード配送で犠牲になる人々

写真:LIMO [リーモ]

日本のブラック企業は真面目な人やおとなしい人を個人的にターゲットにした「パワハラ」や「イジメ」などが目立つのに対して、アメリカのブラック企業として知られる「アマゾン」や「ウォルマート」には、組織的に社会的な弱者を搾取するという、資本主義の縮図が見られます。

特にアマゾンは商品到着のスピードをどんどん早めることを優先し過ぎて、そこで働く人々の安全がおろそかになっているのではないかという批判が高まります。 

問題はアマゾン社内だけにはおさまらず市民も巻き込まれるという事態に。もはや、アマゾンのブラックぶりは他人事ではありません。

■けが人は同業者の2倍以上

米非営利ニュースメディアThe Center for Investigative Reporting (Reveal) は2019年11月25日、アマゾン倉庫内のケガ事情に関する記事を掲載しました(※1)。

Revealが調べたところ、米アマゾン倉庫110のうち23倉庫からOSHA(米労働安全衛生局)に傷害事故報告書の提出があり、それらを統計すると重篤なケガを負った従業員の数は同業者の約2倍を上回るということです。(2018年度:100人中 アマゾン9.6人、業界平均4人) 

これに対して、アマゾン広報担当のアシュリー・ロビンソン氏は「傷害事故率が高いのは、アマゾンが積極的に傷害事故の記録をとり、怪我をした従業員に無理して職場復帰させないよう注意を払っているから」で、「会社としての効率はさがってしまうが、こうすることは、従業員の利得を配慮してのことだ」とRevealに書面で答えています。

しかし、Reveal のインタビューに応えた従業員、関係者らの話からは、本当に従業員の利得を重視しているのか納得しかねます。

商品をピッキングするピッカーとして働いていたパーカー・ナイトさんは、既に倉庫で怪我をして障害を負っていたため、勤務時間を短縮してもらってはいたものの、「1時間に小さい物で385個、中サイズは350個のピック」のノルマがあり、結局、ノルマ達成に数回失敗して解雇になったとRevealに話しています。

ピッカーはトイレに行く暇もないほど厳しいノルマと長時間労働に耐えなければならない、という話は既に多数のメディアでも取り上げられています。

■トレーニングなしに危険な職種へ移動―アマゾンに責任なし

2017年にはインディアナ州の倉庫で、フィリップ・リー・テリーさんがフォークリフトの下敷きになって死亡したという事故が起きました。

この事故の捜査をしたインディアナ州OSHAの安全調査官ジョン・スタローン氏によると、テリーさんはメンテナンス職の経験も正式なトレーニング証明もなく、ピッカーから突然メンテナンス部に移されたということです。

結局この事故は、スタローン氏が下したアマゾン側の「安全配慮義務違反」から、正式な証拠がないということで「本人の不注意」ということになりました。その後、スタローン氏はその職から退くことになりました。

この背景にはアマゾンが2017年に第2本社の設立計画を発表し、インディアナ州がその誘致合戦に参戦していた事に関係している可能生が高いと、Revealはスタローン氏や関係者からの証拠や証言から指摘。しかし、インディアナ州のエリック・ホルコム知事は「一切関係ないことだ」と主張しています。

■市民を巻き込む交通事故―これもアマゾンに責任なし

ノルマ達成のため、躍起に走り回るアマゾン配送運転手による、一般市民を巻き込んだ事故が増ています。しかし法的にはアマゾンに責任はないという配送システムができています。

米Buzzfeednews.comは「アマゾンの翌日配送サービスはアメリカの街路を無秩序で流血の場にしてしまった―しかし、世界で一番大きなリテーラーはその責任を逃れるシステムを持っている」というタイトルの記事の中でいくつかの被害例とともに、アマゾンに都合のいい配送システムについて説明しています(※2)。

アマゾンのスピード配送は、アマゾンを主な収入源とするスタートアップや地元の配送会社に厳しいノルマを課すことで成り立っている、といいます。

繁忙期には天候が悪かろうが「我々の優先すべきことは、すべての商品を時間通りに顧客に届けることだ」と、アマゾンが送った配送会社に圧力をかけるメールも公開されています。

ほとんどの会社がルート毎の定額契約です。契約額は低く、車の整備も十分にできない会社もあるそうです。運転手はポンコツ車と、時には1日に250個もの配達ノルマを課されることもあるとのこと。

契約上アマゾンは配送会社に対して、運転手の最低6カ月以上の経験と身元検査を要求してはいるものの、実際は運転手が辞めてしまうことが多いため、そんな条件はつけられないというのが現状のようです。

事故が起きてしまった場合は配送会社と運転手の責任で、アマゾンには契約上一切責任がないということです。

■まとめにかえて

どうでしょう、社会的に弱い立場に無理のしわ寄せがいってしまう仕組みになっているのが分かります。

スピード配送で顧客は喜び、アマゾンは儲かる。しかし、まったく関係のない市民にまで被害が広がってしまうようでは、もはや他人事では済まされません。不審な配送ヴァンをみかけたら要注意です。

【参考】
(※1)“Amazon’s internal injury records expose the true toll of its relentless drive for speed” Reveal
(※2)“Amazon’s Next-Day Delivery Has Brought Chaos and Carnage to America’s Streets ― But The World’s Biggest Retailer Has A System To Escape The Blame”BuzzFeed.News

美紀 ブライト

 

この記事を書いた人