【沖縄タイムス】 [評価書未明搬入]姑息なあまりに姑息な

2011年12月29日 【沖縄タイムス】 

異常と言わざるを得ない。民主国家を名乗る国のやることなのだろうか。あまりに姑息(こそく)としか言いようがない。

沖縄防衛局は米軍普天間飛行場の辺野古移設を進める手続きで、環境影響評価(アセスメント)の最終段階となる評価書をあろうことか、午前4時すぎに県庁の守衛室に運び込んだ。阻止行動を続けている市民団体のいない時間帯を見計らい、仕事納めの日、しかも夜明け前に搬入するのは、常軌を逸している。

前日には配送業者に届けさせようとしたが、市民団体に押し戻されている。事業者の代わりに配送業者に運ばせるというのも前代未聞だ。

未明搬入といい、配送といい、だまし討ちのようなものだ。政府は評価書の提出について正当性がないことを自ら暴露している。

政府が政策を実現するためには、賛成、反対があったとしても、政策の妥当性だけでなく、倫理性が求められ、それに応える姿勢が最低限なければならない。政府はそれらをすべてかなぐり捨てている。事業を進める正当性はもはや喪失したのも同然だ。

辺野古移設計画を認める材料は、県内に一片もない。政府が米国の顔色ばかりをうかがうことをやめ、辺野古移設計画がすでに破綻していることを認識するのであれば、そもそも評価書の提出はあり得ないはずである。

未明搬入は、政府が無理に無理を重ねていることを示している。本来ならば、政府は米国との仕切り直しに全力を挙げるべきなのだ。

環境アセスは事業実施に先立って自然や生活環境に及ぼす影響を予測し、影響を緩和する手段である。住民との対話が必須条件となる。

沖縄防衛局は説明責任を果たさなければならず、そのためには情報公開が必要になるが、決定的に欠けていた。

垂直離着陸輸送機MV22オスプレイ配備を隠したまま後出しじゃんけんのように情報を出し、評価書の段階で初めて盛り込んだ。県民の意見表明の機会が奪われた。情報公開にもとり、環境への配慮によって国民の健康で文化的な生活を確保するとした環境アセスの精神を踏みにじっている。日本自然保護協会が抗議したのは当然である。

評価書は「直接的な影響はない」などのオンパレードである。絶滅危惧種ジュゴンに関し、同協会は科学的論理が飛躍し決して認められないと批判している。結論に合わせる「アワセメント」なのだ。

県は受理する方針を決めた。仲井真弘多知事は行政上の事務手続きとの立場だが、政府には辺野古移設に向けたワンステップである。

仲井真知事は27日の報道各社とのインタビューで、評価書を受理しても埋め立てを承認することにはならない、と発言。「県外移設」の公約を貫く考えを示した。公約が揺るがないのであれば、行政的にはどうであれ、「異常搬入」に対して、毅然(きぜん)とした態度を示すべきだった。

異常搬入は日本の環境アセスに悪い前例を残す。だが、評価書提出が「蟻(あり)の一穴」になることは民意が許さない。

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