高市首相が労働時間規制緩和を指示したと報道された。一部の人手不足の業界からは歓迎の声も聞かれる。
働き方の選択肢が増やせる、などと言っているが、手放しで喜べるものではない。ある求人を取り扱う会社が、健康を損なうリスク、健康を維持しながら働き方を選ぶことは実際には難しいのではないだろうか? と警鐘を鳴らしているとの報道もあった。
なぜ労働時間規制が強化されたのか?
これまでの社会において、労働時間の規制が緩かったことから、働き放題、稼ぎ放題であった。働きたい人働ける社会であった。そういう社会では、働きまくる一部の社員を評価する。労働時間を抑制し人間らしい社会生活を送る人を揶揄したり、見下げる風潮を当たり前のこととしてきた。 そういう教訓から、労働時間規制が要求されたのだ。
労働力が足りないから労働時間規制を緩和する、そんな単純の足し算掛け算ではない。高市首相は総裁就任会見で、ワークライフバランスを捨てる、馬車馬のように働く、自民党は人材が少なくなったから皆で働かないといけない、と演説した。正に働きまくる人が他の人びとに働きまくることを強要している。
Asu-netでは、総裁就任会見の「ワークライフバランスを捨てる発言」について強く抗議した。今回の指示で、その発言が比喩でも精神論でもないことがハッキリした。
僧衣の下の鎧ではなく、武者姿が現れた。
私たちは労働時間規制緩和に強く反対する。
日本の労働時間規制緩和への動きは、世界の潮流から著しく乖離している。
欧州連合(EU)では、時間外労働を含めて週の労働時間を最大48時間に制限し、全ての労働者に対して24時間ごとに最低連続11時間の休息期間(勤務間インターバル)を法的義務として確保している。これは、日本の「努力義務」とは異なり、罰則を伴う法的権利である。
日本は、すでに「長時間労働(高インプット)」でありながら「低生産性(低アウトプット)」の経済であると批判されている。労働時間延長を可能にしても根本的な問題は解決しない。
日本が今行うべきは、EUのような勤務間インターバル制度の義務化など、国際的な動向に合わせ、労働基準法による強行法規による規制の強化に舵を切ることである。
NPO法人 働き方Asu-netは、高市首相による労働時間規制緩和の指示に対し、強く反対し、直ちにその検討を撤回することを求める。
2025年10月26日
NPO法人 働き方Asu-net
共同代表理事 岩城穣 伊藤大一
