毎日新聞
学校教員に過重労働を強いる部活動が問題視される中、現役教職員や教育学者が年内にも「日本部活動学会」を設立する。「ブラック部活動」とも言われる実態についての議論や調査、政府への提言で現状を変えることを目指している。【小国綾子】
部活動はそもそも教育課程に含まれず、学習指導要領も「生徒の自主的、自発的な参加により行われる」と定めているにすぎない。「だが、実際には教員も生徒も強制されています」と、学会の発起人代表で教育学者の長沼豊・学習院大教授は指摘する。教員全員が一つ以上の部活動の顧問か副顧問を担当する「全員顧問制」と呼ばれる慣習を9割の中学校が採用。生徒全員に加入を強いる中学校も地域差はあるが全国平均で4割近い。
文部科学省の教員勤務実態調査結果(2016年度速報値)では中学教諭の6割近くが国の「過労死ライン」である週20時間以上の「残業」をこなす。その一因が部活動だ。
しかも、過労死ラインを超す長時間労働に残業代は出ない。公立小中学校の教職員給与を定める特別措置法で月給の4%分が「教職調整額」として上乗せされ、時間外勤務手当は支給されない。
発起人の一人で「ブラック部活動」を刊行した内田良・名古屋大准教授(教育社会学)も言う。「教員も保護者も『部活動は先生が指導するもの』と思い込んできたが、教員も労働者です。平日の部活動はサービス残業で土日の手当も最低賃金に届くかどうか。まさに“ブラック”です」
学会の発起人は約30人になる見通しで、弁護士も参加する。
野球部の顧問として「部活動指導スタートブック」を刊行した大阪府の中学教諭、杉本直樹さんも発起人に名を連ねる。部活動の意義は認めつつ見直しは必要と考え、「スポーツや文化活動の大会を減らすべきだ。休日の引率など教員の負担を減らし、勝利至上主義を脱することで生徒のためにもなる」と語る。
文科省とスポーツ庁は今年1月、学校の部活動に休養日を適切に設けるよう全国の教育委員会に改めて通知。スポーツ庁は16年ぶりに部活動の実態を調査し、今年度中に休養日の日数などを含むガイドラインを策定する方針だ。しかし、1997年にも当時の文部省が休養日などの目安を示したが現場に浸透せず、実効性を危ぶむ声もある。長沼教授は「休養日の設定だけでは不十分。『全員顧問制』をやめて選択制にし、外部から指導員を入れるべきだ」と説く。