世間はアベノミクスに浮かれているが、円安が進めば輸入価格が高騰し、給料が上がらなければ、庶民の生活は苦しくなる。で、その傾向はもう出始めているのだ。これから春にかけて、恐怖の値上げラッシュが始まる。
総務省が先月25日、発表した2012年の消費者物価指数は99.7(2010年を100とする)で前年比0.1%下落、4年連続マイナスになった。
こうしたマクロの指標を見せられると、日本はまだデフレの真っただ中にいて、インフレ懸念なんて関係なさそうに見えるが、そうではない。
個別の物価指数を細かく見ると、すでに悪い値上げが始まっていることが分かるのだ。
円相場は昨年11月の時点では1ドル=80.79円だった。あっという間に10円以上、円安が進んだ。単純計算で輸入価格は10%以上、値上がりすることになる。今後、1ドル=95円、100円なんて展開になればなおさらなのだが、実際、去年の11月と比較するとスパゲティは消費者物価指数で94.3→106.8へ。即席めんは97.7→98.5へ。ガソリン価格は去年の7月は135円(レギュラー、リッター)だったのが今月は144円である。
それでなくても、生鮮野菜は86.3→106.2、ほうれんそうは81.6→124.5と高騰している。これに小麦粉を中心とした輸入食料品の値上げが重なれば、家計を直撃することになる。
<オイルショックの再来も>
「今後は非常に厳しい値上げラッシュになると思います。すでに電気料金、灯油も上がっていますが、4〜5月にかけて、小麦粉や牛肉などの輸入価格が上がることで、パスタだけでなく、食パン、うどん、ケーキも値上げになるでしょう。立ち食いそばやハンバーガー、牛丼も値上げになる。これまでギリギリで価格競争をやってきたところほど、値上げしなければやっていけなくなる。ファストフード店、牛丼屋、学校給食、社員食堂などです。生活が苦しい人の財布を直撃することになると思います」(経済ジャーナリスト・有森隆氏)
ちょっと前まで安売り競争をしていたのに、「すぐに価格に転嫁できるのか」と思うが、この背景には政治的思惑も絡む。2%の物価目標を掲げる安倍政権だが、この数字の達成は難しい。比較的値段がかさむ家電製品などに値上げの余地はないからだ。物価を押し上げる主役は食料品になるとみられていて、「政治とのアウンの呼吸で、苦しい業界はなびくだろう。大手数社が業界を独占している品物から値上げが始まる」(同)とみられている。
値上げが確実視されているのはオリーブオイル、サラダ油、欧米の高級ファッション、ワイン、ミネラルウオーター、化粧品、バッグ、靴、輸入たばこ、トイレットペーパーなどなどだ、すでにアメ横あたりでは「オリーブオイルの買い占めの動きがある」(事情通)という。そんな動きが広がれば、オイルショックの再来みたいになる。安倍が無理やり仕掛けようとしている悪い円安は、大変な副作用を伴うのだ。