労政審:成果賃金導入の報告書 「健康確保」義務付け

http://mainichi.jp/select/news/20150214k0000m040085000c.html
毎日新聞 2015年02月13日

労働基準法改正案の骨子(図は省略)

 労働時間ではなく成果に対して賃金を支払う「ホワイトカラー・エグゼンプション」制度の導入など労働基準法の見直しを検討していた労働政策審議会(厚生労働相の諮問機関)の分科会は13日、同制度の対象者を労基法の労働時間規制から除外することなどを盛り込んだ報告書をまとめた。報告書をもとに厚労省は労基法の改正案を作成し、今国会に提出。2016年4月の施行を目指す。

 報告には、「高度プロフェッショナル制」の名称でホワイトカラー・エグゼンプションの制度内容が盛り込まれ、「健康確保措置」を義務付けた。他に、裁量労働制の対象となる企画業務の拡大▽フレックスタイム制の労働時間の調整期間を1カ月単位から3カ月に拡大−−など、労働時間に関する規制緩和も盛り込んだ。

 一方で、月60時間を超える残業の割増賃金を50%以上とする規定を、大企業に加えて中小企業にも適用するとした。また、有給休暇の取得を拡大させるため、年5日の有給休暇の取得時期の指定を使用者側に義務付けることも掲げた。

 同審議会は労働者、使用者、公益代表の3者で構成される。13日の会合では労働側委員が「労働者の命と健康を守る(時間)規制になぜ穴をあけるのか。理解も同意もできない」と厳しい口調で反対を主張した。使用者側委員は「働き方の選択肢を広げることは変化に対応する意味でも重要だ」と語った。労政審は3者の合意が前提だが、労使の溝は埋まらないまま、労働側の反対を押し切る形で報告書をまとめた。

 審議会を傍聴していた東京過労死を考える家族の会の中原のり子さんは「長時間労働の抑制に実効性のある提案はなく、この制度の下で過労死が起きたらどう対応するのか」と話した。【東海林智】

 ◇労働基準法改正案の骨子

※カッコ内は制度の対象

■ホワイトカラー・エグゼンプションの導入(全労働者の平均年収の3倍を超え、高度で専門的な業務に従事する人)

■有給休暇の年5日消化の義務付け(正社員中心)

■月60時間を超える残業代の割増率を25%から50%以上に(これまで割増率アップの適用猶予を受けていた中小企業)

■裁量労働制の適用拡大(企画や課題解決型の営業業務)

■フレックスタイム制の見直し

 ◇過重労働、懸念消えず

 今回の労働政策審議会の報告で一番の目玉は、ホワイトカラー・エグゼンプションの導入だ。

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