劣悪なコンビニの現状。規制の進まぬ理由は、「経産省の反対」<辰巳孝太郎氏> (2/24)

劣悪なコンビニの現状。規制の進まぬ理由は、「経産省の反対」<辰巳孝太郎氏>
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2020/02/24(月) 8:33配信 HARBOR BUSINESS Online

劣悪なコンビニの現状。規制の進まぬ理由は、「経産省の反対」<辰巳孝太郎氏>
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国会で「コンビニの闇」を追及してきた男、辰巳孝太郎
昨年、東大阪のセブンイレブンのオーナーが二四時 間営業に反対し、自主的に営業時間の短縮に踏み切ったことが大きく報道された。コンビニのオーナーたち が人手不足の中、過酷な労働を強いられている実態に注目が集まり、24時間営業や元旦営業の見直しなどが議論されるようになった。

 私たちはコンビニが24時間・365日営業してい ることに慣れ、それを当然のことだと考えてしまって いる。しかし、その裏では多くの人たちが厳しい労働 環境に置かれている。 私たちが当然と考えているものは、多くの犠牲の上に成り立っているのだ。

 真正保守論壇誌『月刊日本 2020年3月号』では、こうしたコンビニエンス業界が抱える問題について、「コンビニの闇」と題した特集を組んでいる。

 前回、明石順平氏のインタビューでも登場した「コンビニ会計」や「フランチャイズ規制」について、どのように国会で議論されたのかを辰巳孝太郎氏が語っている。

バイトの勤務時間を違法に切り捨てるセブン
―― 辰巳さんは国会でコンビニ問題を追及してきました。どのような問題意識からコンビニ問題を取り上げたのですか。

辰巳孝太郎(以下、辰巳):もともと私はセブンイレブンで働くアルバイトの待遇に関して問題意識を持っていました。セブンイレブン本社は「ストアコンピュータ」という独自の勤務管理システムを各店舗に使用させています。セブンの従業員たちは出勤時にこのコンピュータにバーコードをかざし、出勤時刻を記録します。これは「出勤スキャン時刻」と呼ばれ、1分単位の正確な時刻です。ところが、「始業時刻」としては「出勤スキャン時刻」から15分未満を切り上げたものが自動入力されていたのです。たとえば、午前2時51分にバーコードをかざした場合、始業時刻は午前3時になります。逆に終業時刻は15分未満が切り捨てられ、午前9時7分に退勤したとしても、終業時刻は午前9時と記録されていました。

 そのため、このシステムを用いると、始業時と終業時にそれぞれ最大14分ずつ労働時間が切り捨てられることになります。その分、賃金は奪われるわけです。年間にすれば相当の額になります。これは労働基準法違反であり、まさに「賃金泥棒」です。

 私はこの質問をするにあたって、セブンのオーナーさんたちから話をうかがいました。そうしたところ、オーナーの状況も非常に深刻だということがわかりました。オーナーさんの中には「確かに勤務時間の切り捨ては問題だが、きちんとアルバイト料を払っていたら利益が上がらない」といった声もありました。

 オーナーは労働者ではなく個人事業主であるため、労働者としての保護を受けることができません。また、コンビニ本部と各店舗は元請け・下請けの関係ではないため、下請法の保護もありません。しかも、本部とオーナーの間には圧倒的な力の差があり、本部が契約更新を拒否すれば、経営を続けられなくなります。こうした中で、オーナーは本部からひどい搾取を受けていたのです。フランチャイズというシステムのもと、「むき出しの搾取」がまかり通っていると言ってもいいでしょう。

 もっとも、アルバイトやオーナーだけでなく、コンビニ本部の社員も苦しい立場に置かれています。特にセブンイレブンは軍隊方式と言われており、社員たちは追い込まれていると思います。最近、セブン本部の社員がオーナーに無断で商品を発注したことが問題になりましたが、これは社員たちに過酷なノルマが課せられているからです。これまではオーナーやアルバイトの問題が目立ち、本部の社員の実態はあまり注目されてきませんでしたが、今後は様々な問題が表に出てくると思います。

自民党議員もコンビニ会計を批判
―― 辰巳さんがコンビニ問題を追及したとき、他の議員たちはどのような反応でしたか。

辰巳:私は予算委員会で「賃金泥棒」の問題を取り上げたとき、セブンイレブンのアルバイトの勤務時間が書かれたパネルを作りました。ところが、予算委員会の理事会で自民党から「セブンイレブンの名前は出すな」と言われました。「これは事実だから問題ないはずだ」と反論しましたが、規則上、理事会の了承を得なければならなかったので、最終的にセブンイレブンの名前は隠して「大手コンビニS社」とし、パネルの色にセブンイレブンと同じオレンジ、緑、赤を使用しました。自民党はセブンイレブンから支援してもらっている部分もあるでしょうから、色々と神経質になっていたのでしょう。 

 また、私が委員会審議にあたってセブンイレブンに関する質問通告をしたところ、その内容がセブン側に筒抜けになっていることもありました。もちろん森裕子さんの質問内容が漏洩したときとは違って、私がセブンについて質問すると通告している以上、所管省庁がセブンに事実関係を問い合わせるのは当然のことです。そのこと自体を批判するつもりはありません。しかし、私に対する答弁をセブン本社が書いているのではないかと疑いたくなるような場面もありました。

 とはいえ、自民党の中にもコンビニのあり方に問題意識を持っている人はいます。私は決算委員会で「コンビニ会計」について取り上げたことがあります。一般の会計では、売上から原価を引いたものが粗利とされますが、コンビニ会計では弁当の廃棄分や万引き分を原価に含まないことになっています。そのため、粗利がかさ上げされ、本部へ支払うロイヤリティが膨れ上がってしまうのです。私がこの問題を追及すると、質問が終わったあとに自民党議員がやってきて、「これはひどいな。もっと暴露してくれ」と激励されました。

 また、経済産業委員会でもコンビニ会計について質問しましたが、ヤジも飛ばず、みんな私の話を静かに聞いてくれました。「セブンイレブンではこういう搾取が行われている」と話すと、みな頷きながら聞いていました。維新の議員からも「辰巳さんの話はよくわかるよ」と言われたことがあります。コンビニ会計の問題に関しては与野党問わず広く共有されていると思います。

フランチャイズ規制法を制定せよ
―― 辰巳さんはコンビニの現状を是正するためにフランチャイズ規制法を作るべきだと提唱していますが、国会議員の中でコンビニの問題点が共有されているにもかかわらず、なかなか法律が作られません。原因はどこにあるのでしょうか。

辰巳:一つは、コンビニの所管省庁である経済産業省が規制を作ることに反対しているからです。もともと経産省は規制緩和を進めてきた省庁ですから、できるだけ規制を作りたくないという文化があるのでしょう。いま経産省はコンビニオーナーから聞き取りを行っていますが、これがガス抜きに終わる可能性も否定できません。

 根本的な問題は、コンビニが大企業だということです。フランチャイズ規制法はコンビニを直接規制する法律ですから、大企業を規制する法律を作ろうと思えば、かなりの力が必要になります。ここに大きな壁があります。

 しかし、少しずつ前進していることも事実です。東大阪のセブンのオーナーである松本さんが自主的に時短営業に踏み切ったことが話題になりましたが、コンビニ各社は時短営業を基本的に認める方向に動いています。24時間営業を見直せば本部の収益は落ちますが、そうしなければ新たなオーナーのなり手が出てこないからです。

 これはコンビニの現状を改めるきっかけになるはずです。ローソンやファミリーマートは競って新たな見直しを提案していますが、それを通じてセブンイレブンよりも一歩前に出たいという彼らなりの戦略だと思います。セブンはこれまで他のコンビニよりずば抜けて高い収益を叩き出してきましたが、いつまでも従来のやり方にこだわっていれば、セブン帝国は崩壊するでしょう。

 自民党もこの流れを無視できないと思います。地方でコンビニのオーナーをしている人たちの中には、もともと酒屋や米屋をやっていたという人がたくさんいます。地方に行けば行くほど、地方の名士というか、地の人がオーナーをやっています。

 また、商店街が潰れてしまった地域では、住民たちはコンビニで買い物をしています。コンビニにはATMが設置されていますし、税金・保険料の収納代行もやっています。経産省は、コンビニは深夜営業をしているため、防犯の面でも大きな役割を果たしていると言っています。コンビニは必要以上に多くの仕事を押し付けられた結果、なくてはならない存在になっているのです。

 そのため、地方のコンビニが声を上げれば、自民党も動かざるを得ません。私たちも引き続きオーナーさんたちをサポートし、フランチャイズ規制実現に向けて活動していきたいと思っています。
(1月31日インタビュー、聞き手・構成 中村友哉)


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