日本労働弁護団「新型コロナウイルスに関する労働問題についての緊急声明」 (3/11)

新型コロナウイルスに関する労働問題についての緊急声明
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日本労働弁護団 2020/3/11


新型コロナウイルスに関する労働問題についての緊急声明

2020年3月11日
日本労働弁護団
幹事長 水野 英樹

新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐ取組みがなされている。政府は「全国的なスポーツ、文化イベント等について」「中止、延期又は規模縮小等の対応を要請」し、小中高の学校等について春休みまでの期間、臨時休校とすることを要請した。そのため、子供を持つ働く者は仕事を休むことを余儀なくされるなどしている。また、イベント等が中止されたり、外出等が自粛される中で、仕事を失ったり、休むことを余儀なくされる者も出てきている。
新型コロナウイルス感染症に対する適切な取組みは必要かつ重要であるが、そのことによって、働く者が仕事や収入を失い困窮することがあってはならない。国及び使用者は速やかに以下の措置を取るべきである。

まず第一に、働く者の収入がしっかり確保される必要がある。

使用者の判断ないし責任によって労働者が休むことを余儀なくされた場合には、使用者は休んでいる期間に対応する賃金の10割を支払うべきである。また、歩合制の給与体系で働く労働者の収入が大幅に目減りする事態も生じており、使用者は生活保障の観点からも収入を確保すべきである。ただし、この負担の全てを使用者に最終的に負わせることは望ましくないことから、政府が助成金制度などを通してしっかり援助すべきである。この理は、雇用契約ではなくフリーランス等で働く者についてもそのまま妥当する。業務委託者や注文者の判断によって仕事をキャンセルした場合には、それに対応する報酬の10割が払われるべきである。
子供を育てている労働者が、子供の学校の休校により休むことを余儀なくされた場合については、使用者は積極的に特別の有給休暇を認めるべきである。政府は、この特別の有給休暇を認めた場合について助成金制度を設けたが、そこには上限額が設定されている。上限額は撤廃して賃金全額を援助すべきである。助成金に上限額の設定があることにより、使用者が上限額を超える負担を嫌って特別の有給休暇を認めず、無給での休暇、若しくは、休暇が取れないという事態を強いられている労働者が現れている。

公務員については行政により、臨時休校の子どもの世話のため出勤できなくとも特別休暇として認める通知を出す等、非常勤講師、学校用務員・給食調理員などについて何らかの業務を行わせ収入が保障される通知が出される等の対応がなされている。ところが、かかる公務員への通知なども全ての職場で遵守されておらず、徹底が必要である。さらに、民間企業においても政府の姿勢を参考に、積極的な取組みをすることが求められる。
なお、労働基準法上は使用者の責めに帰すべき事由により休むことを余儀なくされた場合には、少なくとも使用者は労働者に休業補償(賃金の6割相当額・労基法26条)を支払うことが刑罰をもって強制されていることを付言しておく。

第二に、新型コロナウイルス対策により経済活動が萎縮したことを口実とする解雇・雇い止めがなされることがあってはならない。使用者は、安易な解雇・雇い止めを厳に慎むべきであるし、許してはならない。解雇・雇い止めの有効性は厳しく判断しなければならない。政府も、その旨を周知徹底すべきである。
フリーランス等で働く者に対する安易な契約解除も厳に慎むべきであるし、万が一なされた契約解除については、労働者と同様に、解除の理由について合理性が厳しく問われなければならない。

第三に、労働者の休む権利もしっかり守られなければならない。有給休暇取得の権利が阻害されることは許されない。いまだ有給休暇の権利が発生していない労働者などに対する配慮も必要である。

第四に、働き方についても、自宅勤務や時差出勤、時短勤務を柔軟に認めるべきである。コロナウイルスの影響による休暇や自宅勤務、時差出勤、時短勤務の必要性については、正規労働者と非正規労働者との間で何ら変わりはないのであるから、異なる取扱いがなされるようなことがあってはならない。
また、あらゆる職場において、通勤・業務中に新型コロナウイルスに感染する事態をできる限り避けねばならないことは当然のことである。そのため、使用者等の安全配慮義務として、上記の時差出勤などに限らず、職場単位でも感染症対策に対して十分な措置を講じねばならないし、政府はそのための正確な情報やマスク等の提供を含め、あらゆる対策を早急に講じるべきである。

最後に、労働組合の活動は今こそ重要である。様々な問題に適切に対応して働く者の生活をしっかり守るためには、法律や政府による対応だけでは不十分であり、働く現場における労働組合の取組みがなにより重要であり、効果的である。労働組合の積極的な活動に期待したい。

日本労働弁護団も、働く者の生活を守るべく、取組みを進めていく。 

 

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