外出自粛、道内の「非正規」直撃 新型肺炎 売上低下で勤務削減
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/398228?rct=n_society
2020/03/2(月) 6:14配信
〔写真〕北海道労働局の特別相談窓口で電話対応をする職員
長期休暇強いられ退職も
新型コロナウイルスの感染防止策として、事業所で営業時間の短縮や臨時休業が広がる中、道内の非正規労働者が不安を強めている。首相は2月29日の記者会見で、企業への支援拡大を表明したものの、売り上げ低下を理由に既に勤務日数の削減や長期休みを強いられるケースが相次ぎ、賃金の未払いも発生。不安定な雇用環境に置かれる派遣社員やアルバイトにしわ寄せが及ぶ。鈴木直道知事の「緊急事態宣言」で客足はさらに遠のき、小規模事業所は経営に行き詰まっている。
「補償の説明が何もないまま、勤務日数を減らされた」。札幌市内の百貨店に勤める派遣社員の30代女性は不安を口にする。実家で暮らし、雇用契約は月12日間勤務で収入は約10万円。派遣会社から2月中旬、「客数減で勤務シフトを見直す」と通知され、3月からは月2万円の減収になる。
一方、正社員の勤務日数は通常通り。同じ職場で働く別の派遣社員には「今回を機に退職を希望するか」とメールが届いた。長期休暇の取得を強いられ、退職を選んだ同僚もいる。女性は「真っ先に非正規社員が犠牲になる」と憤る。
感染拡大を受け、北海道労働局に寄せられた相談は、2月1〜27日で延べ219件に上った。このうち、企業が労働者に支払う「休業補償」に関する相談が最多の106件を占めた。
休業補償は労働基準法に基づき、事業者に対し、休業の原因が「事業所の責任」の場合、平均賃金の6割以上を従業員に払うよう義務付けている。ただ、今回のように、外出自粛や一斉休校の要請を受けて休業する場合、どこまでが企業の責任か線引きはあいまいで、労働局は「事例ごとに判断する必要があり、まずは相談してほしい」とする。
政府は感染拡大で影響が生じた事業者への雇用対策として「雇用調整助成金」に特例措置を設け、中国人の客数などが売り上げの1割を超える場合、賃金や休業補償の一部を助成しているが、国籍別の顧客数などを記録していない小規模事業者から「利用しにくい」との声が上がっていた。
給与未払い「泣き寝入りしかないのか」
安倍首相はこれ以外の対策として、29日の会見で「雇用調整助成金を活用した特例的な支援」を10日程度で策定するとしたが、賃金の未払いなどが既に発生し、各地に不安が広がる。
北見市の50代男性は、札幌で専門学校に通う次男が、アルバイト先の居酒屋から2月分の給与約10万円が支払われず、急きょ仕送りした。店の関係者は「感染拡大で売り上げが大幅に減り、経営者の行方が分からなくなった」と説明。男性は「泣き寝入りするしかないのか」と肩を落とす。
経営者側も苦境に立たされている。札幌・ススキノでライブハウスバーを経営する恩本貴広さん(46)は「このままでは店を閉めるしかない」と訴える。2月はライブを自粛しており、売り上げは例年の3分の1まで激減。従業員の給与を支払うと大きな赤字に。「零細事業主の目線に立って対策を考えて」と要望する。
労働問題に詳しい島田度弁護士(札幌)は「政府や道は、休校や外出自粛について『要請』という言葉で責任の所在をあいまいにしている。補償範囲を広げるなど柔軟に対応するべきだ」と訴える。