外国人就労 新制度の利用促す方策を探れ
https://www.yomiuri.co.jp/editorial/20200301-OYT1T50175/
読売新聞 2020/03/02 05:00
新しい在留資格「特定技能」が導入されてからまもなく1年になる。
資格を取得した外国人は1月末で約3100人にとどまる。初年度で最大4万7550人と見込んだ人数を大きく下回る。理由を分析し、改善策を講じる必要がある。
日本は、急速に少子高齢化が進む。労働力人口の減少を補う上で、即戦力の外国人を受け入れていくのは避けられまい。
新制度は、建設や介護など14業種で、外国人が単純労働に従事することを認めた。企業には、日本人と同等の報酬を支払う義務があり、生活面での支援も行う。
資格取得には、日本語と技能の試験に合格するか、技能実習生から移行するのが主なルートだ。
現時点では大半が移行組である。約3年の実習経験があれば、無試験で資格を取得できる。
日本で技術を習得し、経験を積んだ労働者が、継続して働けるようにした意義は小さくない。
懸念されるのは、技能実習生の増加がなお続いていることだ。厚生労働省によると、昨年10月末時点の技能実習生は38万人を超え、1年間で7万人増えた。外国人材への需要は高い一方、新制度が機能していない実情を物語ろう。
技能実習は本来、途上国への技術移転が目的だが、安価な労働力を確保する手段として使われている現状がある。仲介業者に多額の借金を背負った実習生が、失踪する事例も相次いだ。
正規の就労資格である特定技能に、外国人受け入れの軸足を移していくのが望ましい。
政府は施行2年後に、制度を見直すことになっている。これに合わせ、技能実習生のあり方も検討する必要があろう。要件の厳格化や、違法な働き方を強いる企業への指導強化が欠かせない。
新制度の運用改善も重要だ。政府は、企業などが行う手続きをオンライン化し、インターネットからの申請を認める方針だ。
オンラインでは記入漏れを通知する機能があり、再提出などにかかる時間を短縮できる。企業の事務負担の軽減を図るべきだ。
企業からは、受け入れに伴う費用負担に不満も出ている。企業を手助けする登録支援機関に支払う初期費用や委託料などが重荷になっているという。出入国在留管理庁は支援機関への指導に努め、適正な利用を促してもらいたい。
政府は自治体と協力し、住宅の確保や生活相談窓口の充実など、地域の受け入れ態勢を整えていくことが大切である。