アマゾン社員が恐れる「コーチングプラン」 社員が訴え
https://www.asahi.com/articles/ASN345VD0N33ULFA033.html
志村亮 2020年3月5日 7時00分
インターネット通販大手アマゾンジャパン(東京都目黒区)で働く40代の男性社員が、具体的な理由が明らかにされないまま減給や降格を伴う懲戒処分になったのは不当として、同社に慰謝料など500万円強の支払いを求める労働審判を東京地裁に申し立てた。アマゾンジャパンは男性の主張に対し「真実に基づくものではなく、一方的なものだ」と反論している。
男性と、アマゾン・ジャパン労働組合が加盟する東京管理職ユニオン、代理人弁護士らが3日、都内で記者会見して明らかにした。
〔写真〕アマゾン社員の男性は人事評価制度の透明性を上げるよう訴える=東京都千代田区
男性らの説明によると、男性は2013年5月にアマゾンに入社。スポーツ用品や一般家電製品の販売促進などを担当してきたが、19年2月、前年の営業成績が悪いなどとして、社内で「コーチングプラン」と呼ばれる業績改善計画(PIP)の対象になると上司から通告された。
プランは4〜5月の2カ月間、実施された。男性は、アマゾンの通販への出店業者200社に電話して有料会員向けサービス「アマゾンプライム」の対象商品を増やしたり、配送業者と組んだプロジェクトを管理して売り上げを伸ばしたりする目標を課された。
男性は5月上旬にはいずれも目標を達成したが、上司は「書面で書いてあることを達成しただけではコーチングプランができたとは認めない」などと主張。男性が、期限までに何を改善すればよいかを尋ねても、自身で考えるよう言われるばかりで明示されなかった。男性は次第に吐き気や頭痛に悩まされるようになり、5月28日に適応障害と診断されたという。
交渉を1人で続けることに限界…
アマゾン社員「理由明らかにせず降格された」 業績改善プログラムめぐり、労働審判申し立て
弁護士ドットコム 2020年03月03日 18時43分
〔写真〕東京・霞が関の厚労省記者クラブで会見を開いた男性(2020年3月3日、弁護士ドットコム撮影)
アマゾンジャパン(東京都目黒区)で働く40代男性が3月3日、具体的な懲戒理由を明らかにせず降職・降格されたのは不当だとして、賃金の差額や慰謝料など計約516万円を求め、東京地裁に労働審判を申し立てた。
男性は2019年3月、社内で「コーチングプラン」と言われるPIP(業績改善プログラム)の対象となった。課題を達成したものの難癖をつけられたとして、社外のユニオンに加入し団体交渉を始めたところ、懲戒処分を受けたという。
申し立て後、男性は東京・霞が関の厚労省記者クラブで会見を開き、「アマゾンのコーチングプランで不安になっている人が大勢いると思う。どうしても許せなくて、労働審判で決着をつけたいと思って覚悟を決めました」と訴えた。
●懲戒処分されるも、具体的には記載なし
申立書などによると、男性は2013年5月に入社。営業本部などをへて、2018年1月から一般家電をあつかう出店者に「アマゾンプライム」の利用を提案する販売促進を担当していた。
2019年2月、上司から「成績が悪い」などと言われ、「コーチングプラン」の開始を告げられた。具体的には、5月末までに、担当する200社全てに電話をかけ、商品のプライム化を進めるなど、営業成績やマネジメントに関する課題が設定された。
男性は数値をいずれも達成。しかし、上司から「できたとは認めない」などと言われたため、「東京管理職ユニオン」のアマゾン支部に加入。7月から団体交渉をおこなったが、回答は得られなかった。
さらに2019年11月1日付で、「機密性の高い情報を外部に提供していた」として、年間10%の減給をともなう降職・降格の懲戒処分を通知された。しかし、具体的にどのような行為をおこなったかについては、記載がなかったという。
●「コーチングプラン」ユニオンには複数の相談
代理人の梅田和尊弁護士は「懲戒処分が有効となるには、客観的に合理的な理由があると認められなければならない。しかし、懲戒処分の理由は極めて抽象的で、どうして懲戒されたかがわからない」と問題を指摘する。
男性は懲戒処分を受ける前、会社側から、顧客の集客率をあげる一環でおこなった情報提供などについて質問をされた。会社側はこの行為を「情報漏洩にあたる」と主張するのではないかと男性側は推測している。
男性は「上司に許可をもらった上でおこなったもので、売上高も上がり素晴らしい功績と認められた。しかし、組合に入り団体交渉した途端に、会社側から外部への情報漏洩だという話をされた」と疑問をていした。
また、男性によると、誰が「コーチングプラン」の対象になるかは「ブラックボックス」だという。ユニオンにもかねてから複数の相談が寄せられているそうだ。
東京管理職ユニオンの鈴木剛・執行委員長は「相談にきている人は、氷山の一角だ。外資だけでなく、日本企業にもPIPの手法は広がっている」と指摘。
梅田弁護士は「PIPそのものは、能力開発の観点からおこなわれるのであれば、問題ではない。ただ、退職に追いやる手段として使われることもある」と話した。
●アマゾンジャパン「主張は真実に基づくものではなく、一方的なもの」
アマゾンジャパンは弁護士ドットコムニュースの取材に、以下のように回答した。
「本団体(編注:ユニオン)の主張は真実に基づくものではなく、一方的なものです。
Amazonは、日本で7000人以上の社員を雇用しており、社員の育成に投資し、キャリアにおける成長を支援しており、社員の貢献を評価し適切な報酬や特典を提供しています。
なお、LinkedInの2019年の働きたい企業ランキングでは、Amazonは日本で1位にランクインしています」