「佐川さんもかわいそう…」森友事件改ざんで財務省職員自殺 妻が佐川氏と国をきょう提訴 (3/18)

森友問題、佐川氏を提訴 自殺の近畿財務局職員遺族
日経新聞 2020/3/18 14:42 
 
〔写真〕国と佐川元国税庁長官に損害賠償を求める提訴のため大阪地裁に向かう原告の弁護士ら(18日午後、大阪市北区)
 
学校法人「森友学園」への国有地売却を巡り、近畿財務局の男性職員(当時54)が2018年3月に自殺したのは決裁文書の改ざんを強要されたことなどが原因だとして、遺族が18日、改ざん当時に財務省理財局長だった佐川宣寿元国税庁長官と国に計約1億1千万円の損害賠償を求めて大阪地裁に提訴した。
 
男性職員は学園との交渉を担当した管財部に所属しており、改ざんが発覚した直後に、神戸市内の自宅で「本省の指示で文書の書き換えをさせられた」とする趣旨のメモを残して自殺したとされる。
 
遺族の代理人は男性職員の「手記」を公表。17年2〜3月、近畿財務局内で複数回にわたり、上司の指示を受けて決裁文書を修正したとし、財務省について「怖い無責任な組織です」と記載している。
 
男性職員の自殺を巡っては、近畿財務局が民間企業の労災に当たる「公務災害」と認定したことが判明している。
 
決裁文書の改ざんは18年3月に表面化。国有地売却に関する決裁文書から、価格の事前交渉をうかがわせる記述や「本件の特殊性」といった文言が削除されていた。同月、財務省が文書14件の改ざんを認め、佐川国税庁長官(当時)が辞任した。
 
財務省がまとめた調査報告書は、文書の改ざんや破棄について当時理財局長だった佐川氏が「方向性を決定づけた」と指摘。本省が財務局に指示したと明記し、佐川氏が主導的役割を果たしたと結論付けた。一連の改ざんの過程で近畿財務局の職員が「改ざんを行うことへの強い抵抗感があった」とし、「本省理財局からの度重なる指示に強く反発」との記載もあった。
大阪地検特捜部は文書改ざんなどの疑いで告発された佐川氏や財務省職員らについていずれも不起訴処分とし、捜査は終結している。

「佐川さんもかわいそう…」森友事件改ざんで財務省職員自殺 妻が佐川氏と国をきょう提訴
https://news.yahoo.co.jp/byline/aizawafuyuki/20200318-00168352/
相澤冬樹 | 大阪日日新聞編集局長・記者(元NHK記者) 2020/03/18(水) 8:25

問題の国有地前で安倍昭恵夫人と籠池夫妻。改ざんで昭恵夫人の名は消された

幸せそうな街で幸せではない人
きのう17日のお昼、東京都内のとある駅前。私は赤木昌子さん(仮名)と待ち合わせていた。森友事件で公文書の改ざんを上司に強要され、自ら命を絶った財務省近畿財務局の上席国有財産管理官、赤木俊夫さん(享年54歳)の妻だ。会うなり昌子さんはしみじみと口にした。

「ここって幸せそうな街ですね」

 確かに、そこは閑静な住宅街に近く、駅前商店街は家族連れの姿が多い。夫を亡くし、子どももいない昌子さんには辛く感じられるのかもしれない。「そうですね、そういう場所ですね」と答えると彼女は続けた。

「この幸せそうな街に住んでいる佐川さんは、きっともう幸せではないんでしょうね…」

「佐川さんもかわいそう」
佐川さんとは、元財務省理財局長で元国税庁長官の佐川宣寿氏。昌子さんは夫の死を巡り、佐川氏と国を相手に裁判を起こすつもりだ。その前に、一度佐川さんの自宅を見てみたいと望んだのだ。

 私たちは佐川さんの自宅へと徒歩で向かった。駅から10分余り歩いた住宅街の真ん中にある。前に到着すると、昌子さんはしばらくじっと建物を見つめていた。インターホンを押すでもなく、ただじっと。そして再びぽつりと言った。

「佐川さんもこの家に住むご家族も、もう幸せではないんでしょうね。何だか佐川さんもかわいそう…」

「これから佐川さんを訴えようっていうのに、同情するんですか?」私は思わず言った。「優しいんですね」

「そんなんじゃないんですけど、森友(事件)に巻き込まれた人はみんな不幸になっていますよね」

「それはそうですけど、亡くなった俊夫さんと昌子さんが一番不幸になっているでしょう」

「でも、かわいそうだなあって思っちゃうんです」

 そして踏ん切りをつけたかのように言った。

「うん、来てよかった。もういいです」

佐川氏と国の責任を裁判で問う
昌子さんはきょう18日、佐川氏と国を相手に賠償を求め大阪地裁に裁判を起こす。夫は森友事件をめぐり公文書を改ざんするよう上司に迫られ、不正に手を染めたことを気に病み、命を絶った。自宅には詳細な「手記」が遺され、その中で「すべて、佐川理財局長(当時)の指示です。」と告発していた。

赤木俊夫さんが務めていた財務省近畿財務局が改ざんの舞台(撮影・相澤冬樹)
昌子さんは、2年前、夫が亡くなった時のマスコミの取材攻勢が怖かった。今でも怖い。だから提訴後の記者会見は代理人の弁護士にお願いし、自らは出ないつもりだ。代わりに弁護士に、自分のコメントを託す。

 彼女が訴えたいのは、夫が死を選ぶ原因となった改ざんは誰が何のためにやったのか?、改ざんをする原因となった土地の売り払いはどうやって行われたか?、その真実を知りたいということ。そのために、職員が本当のことを話せる環境を財務省と近畿財務局には作ってほしいということ。

「佐川さん、本当の事を話してください」
そしてそのために、まず佐川氏が話さなければならないと思っている。それが、佐川氏が真の意味で楽になる道だと。

 昌子さんは訴えるつもりだ。

「佐川さん、どうか改ざんの経緯を、本当の事を話してください。よろしくお願いします。」

【執筆・相澤冬樹】

 なお、この件に関する記事はきょう18日の大阪日日新聞、日本海新聞に掲載されているほか、以下のサイトでも読めます。

文春オンライン:https://bunshun.jp/articles/-/36667

問題の国有地に建つ小学校の名誉校長は安倍首相の妻、昭恵夫人だった(冒頭と末尾の画像は関係者提供)

相澤冬樹
大阪日日新聞編集局長・記者(元NHK記者)

1962年宮崎県生まれ。1987年NHK記者に。山口、神戸、東京、徳島、大阪で勤務。神戸で阪神・淡路大震災を取材。大阪でJR福知山線脱線事故を取材。大阪司法記者クラブ担当の2017年に森友事件に遭遇して取材を進めるが、2018年記者を外されてNHKを退職。この時の経緯を「安倍官邸vs.NHK 森友事件をスクープした私が辞めた理由」(文藝春秋刊)という本にまとめた。現在、大阪日日新聞に務めながらYahoo!ニュースをはじめ日刊ゲンダイや週刊文春など様々な媒体で記事を書いている。 

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