運転手敗訴の高裁判決を取り消し 国際自動車事件 (3/30)

運転手敗訴の高裁判決を取り消し
https://www3.nhk.or.jp/shutoken-news/20200330/1000046457.html
NHK News 2020年03月30日 19時15分 首都圏

東京のタクシー会社「国際自動車」の運転手たちが、残業代が増えるほどそれにあわせて歩合給が引かれ、結局同じ額の給与となる仕組みは違法だとして会社を訴えた裁判で、最高裁判所は「労働基準法の趣旨に沿うとは言いがたい」と判断し、運転手らの敗訴とした高裁の判決を取り消しました。

東京や神奈川を中心にタクシー事業を展開する「国際自動車」では、タクシー運転手の残業代が増えると、それにあわせて歩合給が減って、結局同じ額の給与となる仕組みの規則を導入していました。

運転手らはこうした規則は労働基準法に違反するとして、残業代の支払いを求めました。
30日の判決で、最高裁判所第1小法廷の深山卓也裁判長は、「労働基準法で時間外労働に割増賃金の支払いが義務づけられているのは、会社側に労働時間の規定を守らせる趣旨があると考えられる。タクシー会社の仕組みは労働基準法の趣旨に沿うとは言いがたい」と指摘しました。

その上で、運転手らの敗訴とした高裁判決を取り消し、東京高裁で未払い賃金の額を審理するよう命じました。

運転手らの弁護士によりますと、国際自動車は裁判が始まってから規則を見直しましたが、ほかのタクシー会社や運送会社では、同じような規則を設けている会社があるということです。 


タクシー運転手「実質残業代ゼロ」は違法 最高裁「割増賃金の本質から逸脱」
https://www.bengo4.com/c_5/n_10994/
弁護士ドットコム 2020年03月30日 20時31分

タクシー運転手「実質残業代ゼロ」は違法 最高裁「割増賃金の本質から逸脱」

〔写真〕判決を喜ぶ労働者側(2020年3月30日、代理人の指宿昭一弁護士提供)

タクシー大手・国際自動車(kmタクシー)でかつて採用されていた、歩合給から残業代相当額を差し引く制度が問題となった訴訟で、最高裁第一小法廷(深山卓也裁判長)は3月30日、残業代の支払いについて定めた労働基準法37条の趣旨に反するなどとして、規則を違法とする判決を言い渡した。

ドライバー側が敗訴した高裁判決が破棄され、未払い残業代の金額を算定するため、審理が東京高裁に差し戻される。

ドライバーの代理人らは「労働者側の完全勝訴」と評価している。

判決後、会見するドライバーら 判決後、会見するドライバーら(代理人提供)

●3つの事件について判断
国際自動車では、ドライバーに対し、基本給や残業代のほか、売上高に応じた歩合給が支払われていた。しかし、歩合給を計算するとき、残業代相当額などが差し引かれ、「実質残業代ゼロ」の状態になっていた。

制度の簡略化したイメージ 制度の簡略化したイメージ

この制度はドライバーの約95%が加入する最大組合が了承したうえで導入されていたが、別の少数組合のドライバーが違法だとして提訴していた。

今回は3つの事件について、最高裁で同趣旨の判決が下された。

●「歩合給の一部につき、名目のみを残業代に置き換えている」
各原判決(高裁判決)では、法令違反などがない限り、賃金をどのように定めるかは自由としたうえで、名目上は法定の金額を下回らない残業代が出ていることなどから、制度を合法としていた。

一方、今回の最高裁判決では、手当の名称や算定方法だけでなく、労働者に対する補償や使用者に残業抑止の動機付けをさせるという労基法37条の趣旨を踏まえ、賃金体系全体における位置付けなどにも留意すべきだとした。

そのうえで、歩合給から残業代相当額を引く仕組みは、元来は歩合給として支払うことが予定されている賃金を名目のみを残業代に置き換えて支払うものだと指摘している。

労基法37条では残業代計算のベースとなる「通常の労働時間の賃金」と「割増賃金(残業代)」を判別できることが求められているが、残業代の中に歩合給(通常の労働時間の賃金)が相当程度含まれていることになるため、判別ができないとして、残業代が払われたことにはならないと判断した。

今後は、歩合給からは残業代は引けないという前提で、高裁で未払いになっている金額を審理することになる。

〔写真〕zoomで記者会見を開いた組も zoomで記者会見を開いた組も。写真は代理人の菅俊治弁護士(左)と中村優介弁護士(2020年3月30日) 


残業で歩合減るのは「法を逸脱」 最高裁が審理差し戻し
https://www.asahi.com/articles/ASN3Z6STHN3ZUTIL014.html
朝日新聞 北沢拓也 編集委員・沢路毅彦 2020年3月30日 20時38分

〔写真〕国際自動車の残業代訴訟で最高裁判決の内容に喜ぶ原告ら=東京都内

 残業などの時間外労働が長くなるほど、売り上げに応じてもらえる歩合給が減るタクシー会社の賃金規則は許されるのか。この点が争われた3件の訴訟の上告審判決で、最高裁第一小法廷(深山卓也裁判長)は30日、「残業代が支払われたとは言えない」と述べ、労働基準法を逸脱しているとの判断を示した。規則は有効とした二審判決を破棄し、審理を東京高裁に差し戻した。

 訴えられたのは、「国際自動車」(東京)。従業員の運転手計62人が未払い分の残業代の支払いを求めていた。

 労基法は、残業などの時間外労働に対する割増賃金の支払いを義務づけており、最高裁判例では、残業代と通常の労働時間の賃金とは判別できる必要があるとされる。

 同社の賃金規則には残業代の項目があるが、売り上げに応じて支払われる歩合給を算定する際、残業代と同額を差し引かれる仕組み。そのため、売り上げが同じ従業員を比べると、残業が長いほど歩合給は少なくなる構造だった。

 第一小法廷は判決で、この算定方法について「残業代を『売り上げを得るための経費』とみて、全額を乗務員に負担させているに等しい」と指摘。残業代が多いと歩合給がゼロになる場合もあり、同社の賃金規則は「労基法の本質から逸脱している」と判断した。

 その上で、同社の残業代には「通常の労働時間の賃金である歩合給として支払われるべき部分を相当程度含んでいる」とし、「通常の労働時間の賃金と判別できない」と結論づけた。差し戻し審では、本来支払われるべき残業代がいくらだったのかが審理されることになる。(北沢拓也)

見直し迫られる「実質残業代ゼロ」
「時間外労働をしても、売り上げから残業代分と同額を差し引く」と定めたタクシー会社の賃金規則が無効かどうかを争った訴訟で、最高裁は30日、実質的に残業代が支払われているとはいえないと判断した。運輸業界で同様の仕組みをとる会社は珍しくなく、「実質残業代ゼロ」などと批判されてきたが、今後は見直しを迫られる。

 時間外労働があった場合、歩合給の働き手であっても、労働基準法37条が定める残業代を支払う必要がある。施行規則が定める計算方法は、歩合給の金額を対象期間の労働時間で割った額を残業代の基礎とする。過去の最高裁判決では、歩合給と残業代を明確に区別することも求めている。

 国際自動車(東京)の場合、形式的に歩合給と残業代は区別されていたものの、歩合給になっているのは、売り上げに応じた額から残業代を差し引いた額だ。最高裁は「元来歩合給として支払う賃金の一部を割増金に置き換えている」と指摘、労基法37条に違反するとした。

 同様の仕組みは、日本郵政グループの運送会社、トールエクスプレスジャパンでもみられ、同社のトラック運転手は「自分で自分の残業代を払っている状態だ」として提訴。現在、大阪高裁の判決を待っている。30日の最高裁判決はこうした訴訟の行方にも影響する。

 「残業代請求の理論と実務」の著書がある渡辺輝人弁護士は「タクシー業界では売り上げに一定の比率をかけた賃金の全部や一部を形式的に割増賃金とする会社が多い。今回の判決はそうした業界の慣行に警鐘を鳴らすものだ」と指摘する。(編集委員・沢路毅彦)


〔swakitaコメント〕東京高裁判決が不合理な判断であった。最高裁がその判断を正したのは当然。それにしても、東京高裁でときどき奇妙な判決が出てくるのには首をかしげる。個人請負形式の就業者の労働者性判断の事例もそうだった。最高裁が高裁判決をくつがえすのが多いのは何故か。

 

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