厚生労働省は、「新型コロナウィルス感染症の労災補償における取扱いについて」(基補発 0428 第1号 令和2年4月28日)を発表しました。
「医療従事者等 患者の診療若しくは看護の業務又は介護の業務等に従事する医師、看護師、介護従事者等が新型コロナウイルスに感染した場合には、業務外で感染したことが明らかである場合を除き、原則として労災保険給付の対象となること」など、今後、関連事例が多数出てくると予想されますので、重要な通達だと言えます。
なお、同日に、厚生労働省のホームページの「新型コロナウイルスに関するQ&A(労働者の方向け)」が改訂されています。
韓国では、既に、新型コロナ感染症について、労災認定事例が出ています。その判断の基になる、今回の日本の通達と同様な内容の勤労福祉公団の認定基準が示されています。詳しくは、「新型コロナ感染を労災と認定したコールセンター事件と労働行政(韓国)(4/20, 4/24更新)」参照。
基補発 0428 第1号 令和2年4月28日
都道府県労働局労働基準部長 殿
厚生労働省労働基準局補償課長
新型コロナウイルス感染症の労災補償における取扱いについて
新型コロナウイルス感染症(以下「本感染症」という。)に係る労災補償業務における留意点については、令和2年2月3日付け基補発0203第1号で通知しているところであるが、今般、本感染症の労災補償について、下記のとおり取り扱うこととしたので、本感染症に係る労災保険給付の請求や相談があった場合には、これを踏ま えて適切に対応されたい。
記
1 労災補償の考え方について
本感染症については、従来からの業務起因性の考え方に基づき、労働基準法施 行規則別表(以下「別表」という。)第1の2第6号1又は5に該当するものについて、労災保険給付の対象となるものであるが、その判断に際しては、本感染症の現時点における感染状況と、症状がなくとも感染を拡大させるリスクがあるという本感染症の特性にかんがみた適切な対応が必要となる。
このため、当分の間、別表第1の2第6号5の運用については、調査により感染経路が特定されなくとも、業務により感染した蓋然性が高く、業務に起因したものと認められる場合には、これに該当するものとして、労災保険給付の対象とすること。
2 具体的な取扱いについて
(1)国内の場合
ア 医療従事者等 患者の診療若しくは看護の業務又は介護の業務等に従事する医師、看護師、介護従事者等が新型コロナウイルスに感染した場合には、業務外で感染したことが明らかである場合を除き、原則として労災保険給付の対象となること。
イ 医療従事者等以外の労働者であって感染経路が特定されたもの
感染源が業務に内在していたことが明らかに認められる場合には、労災保険給付の対象となること。
ウ 医療従事者等以外の労働者であって上記イ以外のもの調査により感染経路が特定されない場合であっても、感染リスクが相対的に高いと考えられる次のような労働環境下での業務に従事していた労働者が感染したときには、業務により感染した蓋然性が高く、業務に起因したものと認められるか否かを、個々の事案に即して適切に判断すること。
この際、新型コロナウイルスの潜伏期間内の業務従事状況、一般生活状況等を調査した上で、医学専門家の意見も踏まえて判断すること。
(ア)複数(請求人を含む)の感染者が確認された労働環境下での業務
(イ)顧客等との近接や接触の機会が多い労働環境下での業務
(2)国外の場合
ア 海外出張労働者
海外出張労働者については、出張先国が多数の本感染症の発生国であるとして、明らかに高い感染リスクを有すると客観的に認められる場合には、出張業務に内在する危険が具現化したものか否かを、個々の事案に即して判断すること。
イ 海外派遣特別加入者
海外派遣特別加入者については、国内労働者に準じて判断すること。
3 労災保険給付に係る相談等の取扱いについて
(1)本件に係る相談等があった場合には、上記1の考え方に基づき、上記2の具体 的な取扱い等を懇切丁寧に説明するとともに、労災保険給付の対象となるか否かの判断は、請求書が提出された後に行うものであることを併せて説明すること。
なお、請求書の提出があった場合には、迅速・適正な処理を行うこと。
(2)本件に係る労災保険給付の請求又は相談があった場合には、引き続き、速やかに補504により当課業務係に報告するとともに、当該請求に対して支給・不支給の決定を行う際には、当分の間、事前に当課職業病認定対策室職業病認定業務第一係に協議すること。
→ pdfはこちら