2021年4月より横浜市内の全市立学校の正規フルタイム勤務の教職員と臨時的任用職員が対象の限定的なフレックスタイム制度の試行が始まった。
一般的なフレックスタイム制度とは異なり、午前7時から10時までの間に15分ごとに区切った13パターンの勤務時間を割り振り、2日前までに学校長に申請し、許可を得られれば希望した勤務時間帯で働くことができる。月5回までの利用と制限しているようだ。
3年間の試行期間の後、希望制で学校長の許可を得れば制度を利用することができるとのことである。
回数は原則として月5回までとしているが、小学生以下の子どもの子育て・介護が理由の場合は、時間帯によって回数制限などに柔軟性がある。これまでは、遅刻や早退として1時間単位の時間有給の取得が必要であったが、フレックス申請を行うことで、勤務時間の融通が利く、ということであるようだ。
このニュースは、神奈川県内の地方ニュース「タウンニュース」(横浜市立小でフレックス導入 教職員対象に4月から | 神奈川区 | タウンニュース (townnews.co.jp))で報道されているが、大手の新聞社等は報道していない。
確かに一般的なフレックスタイム制度の導入でもなく、変形労働制の導入という大きな制度変更でもない。また、就業規則にもよるが、校長裁量で出勤時間の変更は既に可能な場合が多い。ただ、これは校長の裁量であるので、校長によって対応に差が出てくることは否めない。そのような実態を鑑みると、今回の横浜市のルールは「画期的な制度改革」と言ってもよいのではないだろうか。
公立学校は、給特法によって残業代が発生しないため、長時間労働の歯止めが効かない職場である。残業代が発生する私立学校でも、違法な就業規則の下、時間管理さえも行わず長時間労働が放置されているケースは枚挙に暇がない。
違法残業で是正勧告が連発された関西大学中等部高等部でも、2021年2月に5度目の労基署の立ち入り調査が入ったとの情報がある。労基署が立ち入り調査するということは、違法残業の疑いが濃厚、ということである。早朝の勤務など勤務の実態に即していない制度のままだと、違法残業が残存しやすいのではないだろうか。このようなケースでも、早出をしたら、早帰りをする。遅出になったら、終業時刻をずらす、などの工夫をすれば、サービス残業はなくしやすい。
横浜市のフレックスタイム制度は、労働時間の管理が前提であるという点が評価できる点である。日常の労働時間の管理を適正に行った上でないと、フレックスタイムは導入できない。多くの学校で未だに時間管理が適正になされていない現状においては、フレックスタイム制度の導入により時間管理が厳重に管理されなければならない。
さらに有給休暇の浪費を防ぐこともできる。時間管理がなかなか進まない公立学校において、小さな改革であるけれども、第一歩として見ることができるのではないだろうか。