新刊紹介 『チェンジ アクション 生活保護 - 生活保護裁判30年の軌跡』(明石書店、2025年11月)

2013年から2015年に行われた生活扶助基準の引き下げ(いわゆる「生活保護基準引下げ」)が「違法・違憲か」をめぐり、全国29の地裁で個別訴訟が提起され、地裁・高裁での積み重ねを経て、2025年6月27日 最高裁が(一定の範囲で)原告側勝訴の判断を示しました。これにより「自治体による保護変更決定処分を取り消す」判断が確定しましたが、国家賠償請求(国への損害賠償)は棄却されました。
 この生活保護裁判をめぐっては、このサイトでも全大阪生活と健康を守る会連合会(大生連)の大口耕吉郎さんが、2025年7月に「森岡孝二先生と生活保護基準引き下げ違憲訴訟―原告勝訴の最高裁判決を受けて―」という記事を書かれています。
 2025年11月、この裁判に取り組んできた弁護士、研究者を中心に注目すべき本『『チェンジ アクション 生活保護 - 生活保護裁判30年の軌跡』』が刊行されました。この新刊書について、編著者の一人、嶋田佳広さん(龍谷大学法学部教授)に紹介文を書いていただきました。また、本の内容を示す動画を作成してみました。
                                                2025年12月6日 swakita

『チェンジ アクション 生活保護 - 生活保護裁判30年の軌跡』(明石書店、2025年11月)、3000円+税。

 嶋田佳広さん(龍谷大学)による紹介文

このたび、明石書店より、『チェンジ アクション 生活保護 - 生活保護裁判30年の軌跡』が刊行の運びとなりました。当方(嶋田佳広(龍谷大学))もいち編者として関わらせていただいた関係で、みなさみにぜひともお手にとっていただきたく、ご案内差し上げる次第です。
https://www.akashi.co.jp/book/b670137.html
もともとは、生活保護の審査請求や訴訟の支援を目的として結成された全国生活保護裁判連絡会という組織があり、1995年の発足からちょうど30年を経たことを踏まえて、来し方を振り返り、行く末を展望する書籍として企画編集されたものです。
内容は、弁護士などの法律家、大学の社会保障法研究者、公務員などの実務家、支援者や当事者、報道関係者など、生活保護(の訴訟)にかかわるもろもろのメンバーが、それぞれの立場から、生活保護の論点や課題を語るものになっています。連絡会のそもそもの成り立ちや、かつてあった裁判(藤木訴訟、柳園訴訟、老齢加算訴訟など)の裏話、生活保護判決の一覧整理など、中身は盛りだくさんで、あえて申し上げるならば、おそらく類書はないのではないかと編著すらも思う!書籍だといえます。
おりしも、基準引き下げ違法最高裁判決が行政によって骨抜きにされるかもしれない剣が峰に立っています。最低水準がまたも下がる危険性が広がってきています。生活保護が社会や市民生活、日々の労働にとってどのような意味をもつものなのか、お読みいただいて、ぜひ感想をお寄せください。一緒に議論していければと思います。
                                         嶋田佳広

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