年度末に向けて派遣切りが横行する中,労働局への是正申告が重要かつ効果的な場面が今後ますます出てくると思われます。是正申告については,組合の方でも弁護士でもご存じない方もたくさんいらっしゃるかと思います。違法な派遣等(偽装請負等含む)がある場合に労働局に申告をすれば,労働局が調査を行います。違法の認定がなされ是正指導が出れば,その後組合による団体交渉で一気に派遣先への直接雇用を勝ち取れる場合も数多くあります。しばしば派遣先は「使用者ではない」と団体交渉を拒否するときがありますが,少なくとも労働局の是正指導が出てさえすれば派遣先には団交応諾命令があり拒否できなくなります。これは先のタイガー魔法瓶や協和メインテナンスの労働委員会の命令により,明確になりました。
またその後派遣先の責任を追及をする裁判を行う際にも,是正申告をして違法の認定を受けておれば,有利に裁判を進められます。そういう意味で,派遣労働者がもうすぐ切られる!と宣告された事案では,申告と団体交渉をセットにして早期に取り組む必要があります。このような手法は民法協派遣研究会での長年の取組みの中で試行錯誤の上で確立されたものですが,あまり全国的には知られていませんでした。ですが最近自由法曹団の本部が申告例を発表したように,この手法は全国的にも注目されつつあります。一斉申告のような取り組みをしてマスコミに取り上げてもらうのも一つのやり方かと思います。
昨今の派遣切り(更新拒絶も含む)の相談を聞いていると,違法派遣や偽装請負事案であるのに,あたかも最近の情勢を理由にした派遣切りを装ういわば「便乗切り」が多いように思います。一見,現在は適法な派遣のように見えても,以前偽装請負から切り替えたような事例では,違法の認定が出ます。是非,組合でも弁護士も労働局への申告をもっと活用しましょう!
権利討論集会の第3分科会で配布した申告マニュアル(案)を添付します。
とりわけおさえておかなければならないポイントを一つ。「労働局は切られてからでは動かない」
切られる前に相談に来られている場合には,とにかく早く申告をしましょう。相談に来られたときにはまだ申告できたにもかかわらず,もたもたしている間に申告の機会を失わせ,相談担当者が「知らなかった」では,本当に取り返しがつかないことになります。時効で債権を失わせたのと同じだと私は考えています。このことを肝に銘じる必要があります。(弁護士 谷 真介)