すでに広がったニュースであるが、アメリカ中西部ウィスコンシン州の公務労働者は全米を揺り動かし、今後のアメリカ労働組合運動を左右させるたたかいとなっている。ウィスコンシン州は民主党の知事であったが、今年1月に共和党の知事が就任し、「財政健全化」を理由に年金や健康保険の保険料引き上げを提案しながら、団体交渉権をほぼ剥奪する法案を議会に提出するという暴挙にでた。
すでに2週間を越える闘いとなり、25日未明に下院は賛成51票、反対17票で同法案を可決、28人の議員が棄権した。上院は民主党議員14人が州外にいて、議会欠席をしているため、採決に必要な定足数を確保することができていないため、まだ成立していない。
オバマ大統領、ソリス米労働長官は「労組つぶしだ」と知事を批判、知事は「大統領は連邦予算に集中した方がよいのではないか」と対決状況。全くもって酷い組合つぶしと言える、団体交渉は住民投票が実施され過半数を得た項目だけに制限するというもので、中間選挙結果から共和党は今のうちに民主党支持最大勢力の組合破壊を狙っている。民間の組織率は7%位で、公務労働者の組織率は50%前後だったはずで、現在ナショナルセンターAFL−CIO、CTWは組織問題を抱えているようだが、全米闘争へと発展した。
CNNは公務員側を支持するリベラル系政治団体「ムーブオン・オーグ」などが主催する抗議デモが26日、全米50州で行われたと報じている。マディソンをはじめ州内各地では教員の大量欠勤により公立学校が休校となっている。昨夜のNHKBK国際ニュースで、女性非正規教員が担当時間数を削減されてきたうえ社会保障料引き上げでは生活は成り立たないと、発言していた。市民のひとりは「公務員は優遇されている、私たちには健康保険が無いのに何故公務員のために市民は協力しなければならないのか」と。日本にもある議論、対立をつくりながら「小さな政府」めざす新自由主義者の手法。
私は、行ったことのないウィスコンシン州だが好きであった。仲野組子さんが専門家であるが、COWS(Center on Wisconsin Steategy)の活動を知って以来、ウィスコンシン州に関心を持ってきた。州立ウィスコンシン大学は労働研究におけるウィスコンシン学派など、左翼的な研究も多く研究陣が労働者を支援していることで有名。貧困の改善と非正規労働が半数にせまった都市の再生のためのシンクタンクとして日本ではない革新的活動をすすめている。アメリカ労働者の歴史に残るたたかいを注目したい。(服部)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/world/news/CK2011022102000029.html