東京新聞 2013年2月21日 朝刊
埼玉県三郷市の職員が生活保護の請求を門前払いしたなどとして、市内に住んでいた元トラック運転手の男性=二〇〇八年に五十歳で病死=と妻(54)ら遺族が市を相手に、生活保護費など約九百五十万円の損害賠償を求めた訴訟で、さいたま地裁(中西茂裁判長)は二十日、市側の対応の違法性を認め、約五百三十七万円の支払いを市に命じる判決を言い渡した。
判決によると、男性は〇四年に急性骨髄性白血病を発症し、勤め先の会社を退職。妻と長男、当時中学生の次女の四人暮らしだったが、入退院を繰り返す生活で収入はほとんどなくなった。
妻は生活保護を申請しようと、〇五年三月〜〇六年五月に市の福祉事務所を数回訪問。自身は夫の世話などで週の半分を病院通いしなければならず、アルバイトの長男の月収も約十万円しかないなどと、生活が苦しい状況を説明した。
だが福祉事務所の職員は、妻に「働けるのであれば働いてほしい」「まず身内に相談してほしい」などと求めた。妻は生活保護は受給はできないと思い、申請しなかった。
判決は、「親族らに援助を求めなければ申請を受け付けない」などの誤解を与えた場合は「職務上の義務違反」にあたると指摘し、福祉事務所の職員の対応を「申請しても生活保護を受けられないとの誤解を妻に与え、生活保護の申請権を侵害した」と判断。「拒否したことはない」という市の主張を退けた。
男性と妻は〇七年七月に提訴したが、男性は〇八年三月に白血病で亡くなり、三人の子どもが訴訟を継承していた。
三郷市生活ふくし課の柿沼昌弘課長は「判決内容を十分精査した上で、今後の対応は弁護士や関係機関などと協議したい」とコメントした。