琉球新報 2014年1月19日
米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設問題を最大の争点とする名護市長選は19日投開票される。4万6665人の有権者は、それぞれの一票が地域の未来を大きく左右することを見据え、貴重な一票の権利を行使してほしい。
市長選は、辺野古移設を推進する前自民党県議の末松文信氏(65)と、移設阻止を打ち出す現職の稲嶺進氏(68)の一騎打ちとなり、国政レベルの激しい戦いを展開した。
日米両政府が移設条件付きで普天間飛行場の返還に合意した1996年以降、5度目の市長選となるが、候補者が移設問題で「推進」「阻止」と対立軸を鮮明にして争うのは初めてのことだ。
選挙期間中、菅義偉官房長官は「昨年末、県知事が埋め立てを承認し、そこは決定している」、自民党の石破茂幹事長は「基地の場所は政府が決める」と述べ、政府・与党として辺野古移設を推進していく考えを重ねて強調した。
基地問題や安全保障政策は国全体の課題だが、移設予定地を抱える地元住民の人権、生命・財産の安全に関わる重大な問題でもあり、民意が最優先に尊重されるべきことは自明の理だ。
選挙は民主主義の発展に欠かせない根幹であり、有権者には名護の地方自治、地域経済づくりの主人公として、誇りを持って投票に臨んでもらいたい。
琉球新報社と沖縄テレビ放送が実施した世論調査でも、投票する候補者を決める基準として「普天間飛行場の移設などの基地問題」を挙げる人が56・7%を占めた。
前回市長選では、普天間移設などの「基地政策」は3番目で19・0%にとどまっていただけに、市民の意識が4年前と大きく変化していることが読み取れる。国策の是非をめぐって長らく翻弄(ほんろう)され、時に地域を分断されてきた名護市民が、移設問題に終止符を打つ−との強い意思表示と受け止めたい。
市長選への関心は、「大いにある」(65・9%)と「ある程度ある」(27・4%)を合わせ93・3%に上った。4年前の投票率は76・96%だったが、大きく上回ることを期待したい。
名護市の有権者一人一人の選択が国策をも大きく左右する重大な選挙だ。重圧もあるだろうが、地域の平和と繁栄、明るい未来を切り開くために、子や孫の将来も見据え投票所に足を運んでほしい。