毎日jp 2009年9月4日
「同じことは繰り返しません」−−。神戸市で3日から開かれている自動車関連の労組で作る自動車総連(西原浩一郎会長)の定期大会で、昨年秋以降、急速に拡大した派遣など非正規雇用労働者が雇い止めなどで大量失職したいわゆる「派遣切り」を巡り、そんな率直な反省の言葉が飛び出した。「正社員クラブ」と、やゆされることもある労組からの言葉。自動車会社で派遣切りにあった当事者からは「同じ労働者として考えてくれたようでうれしい」との声が出ている。
発言は3日の定期大会の運動方針を巡る質疑で飛び出した。ホンダ労組の組合員が「昨年秋以来、多くの非正規労働者の雇用が失われ、社会的な批判も浴びた。同じこと(派遣切り)の繰り返しは許されない。執行部はどう考えるのか」と質問、対応や考え方を聞いた。
これに対して執行部は、生産が大幅に減少する中で起きたことだとの認識を示した上で「(派遣切りを)重く受け止め、同じことは繰り返さない」と表明した。さらに、非正規労働者を含めどう雇用を守るかを経営陣らと定期的に協議し、対応を検討していると説明。労働者派遣法の改正を巡っても、製造業務への登録派遣を原則禁止するとした民主党や社民党の改正案(先の国会で廃案)に「自動車総連も基本的には同じ」と賛成する立場を明確にした。
この発言に、昨年末に契約途中で三菱ふそうを雇い止めになり、地位確認を求めて係争中の元派遣労働者、鈴木重光さん(36)は「雇い止めになった時に正社員組合は何もしてくれなかったが、ちゃんと向き合って考えてくれたのかと思うとうれしい。(裁判を起こし)声を上げて良かった」と述べた。派遣労働者の支援をしてきた首都圏青年ユニオンの河添誠書記長は「今後、具体的に何をするのかが大事だが、大企業労組が派遣切りを問題にし率直に語ったことは重要だ。歓迎したい」と話している。【東海林智】