働く人の2009年の平均時給は前年より35円少ない2228円で、1995年以来14年ぶりの低水準だったことが、第一生命経済研究所の分析で明らかになった。08年秋以降の不況では、製造業などの残業時間の減少が賃金水準が下がる大きな要因とされているが、時間当たりの賃金が抑えられたことも、「賃金デフレ」を加速させているようだ。
厚生労働省による「賃金構造基本統計調査」の年収や労働時間のデータをもとに算出した。
勤労者全体の平均時給は、直近のピークが01年の2328円で、8年間で100円下がったことになる。前年からの減少幅は03年が44円、04年が25円と大きかった。06年から08年にかけて計10円上昇したが、09年は世界的な不況で再び大幅悪化に転じた。
非正社員が「雇い止め」などで真っ先に雇用調整の対象になったのに対し、賃金抑制の圧力は、年功カーブの平準化や賞与カットなどで主に正社員に向かったとみられる。
同研究所の熊野英生・主席エコノミストは「賞与の回復が見込める今年は、大幅な時給減少には歯止めがかかるだろう。しかし、賃金体系が元に戻ることは期待しにくく、賃金デフレからの脱却は当面難しい」と指摘する。
職業・男女別では「大学教授・男性」の時給が最も高く、5985円。「医師・男性」が5708円、「パイロット・男性」が5608円、「公認会計士、税理士・男性」が4961円と続く。(江渕崇)