株主オンブズマンが2011年4月〜6月に上場企業の採用活動に関するアンケート調査を実施しました。このたびその結果がまとまり、同会のホームページに発表されました。「就職新氷河時代」と言われる新卒採用環境のもとでの学生の就職活動と若者の働き方に関する貴重な資料としてここに転載させていただきます。
図表を含む調査結果の全文はこちら(PDF)
2011年8月4日
NPO法人 株主オンブズマン
? 調査結果を踏まえた株主オンブマンの提言
本会は、大学生の就職難が深刻化しているなかで、2011年4月〜6月に、上場企業の採用活動の現状を把握するために、日経300銘柄の企業を対象にアンケート調査を実施した。
1990年代の後半から「就職氷河時代」という言葉が使われてきたが、最近は「超氷河時代」とも形容され、2011年3月新卒者の就職状況は「過去最悪」とさえ言われている。この調査で、2011年4月入社の採用実績と、2012年度4月入社の採用予定を尋ねた結果を見ても、就職環境が好転する兆しはない。総合職の門が狭く、一般職の採用が厳しく抑えられているなかで、女子学生は男子学生以上に深刻な状態におかれている。調査結果では3月11日に発生した大震災と原発事故により採用を減らすと答えた企業はほとんどないが、被災地域の学生が就職活動で困難に直面していることはいうまでもない。また、最近は企業の採用活動が早期化・長期化し、その大学教育への影響が問題になり、この調査結果にも、過半の企業が、それを望ましくないと考えていることが示されている。
以上の状況と以下に述べる調査結果を踏まえて、本会は取り急ぎ下記のような提言を行うものである。
上場企業に対して
1.現在の大学生の就職難を改善するために、雇用の確保は企業の社会的責任であるとともに、持続的経営の人的基盤であることを自覚し、長期的視点から新卒採用枠の拡大に努める。
2.男女雇用機会均等法の趣旨に沿って、総合職は主に男性、一般職は主に女性というコース別雇用管理を改め、総合職への女性採用を大幅に増やす。
3.内定を得られずに卒業する学生が増え、若年者の非正規労働者比率や失業率が高まっているなかで、数年以内の既卒者を新卒として採用する措置を導入し、すでに既卒採用枠を設けている企業はその枠を拡大する。
4.東日本大震災の影響による新規採用の抑制と雇用の削減を極力回避し、とりわけ就職活動について困難を抱えた被災地域の学生には、採用選考上の特別の配慮を行う。
5.早期化し長期化してきた採用・就職活動が大学教育に種々の困難をもたらしてきたことを重視し、採用活動は、可能な限り大学教育の妨げにならない時期に実施するように改める。そのために、とりあえずは、上場企業が足並みを揃えて、「4年生の4月に広報開始、8月に選考開始」に踏み切る。
6.上記の改定を確かなものにするために、受付や面接の開始時期などに関して、大学側(全国的大学団体)と企業側(全国的経済団体)の自主的な協定を、できれば文科省および厚労省も入って、締結する。
政府(文部科学省と厚生労働省)に対して
1.上場企業に対する上記の提言に示した諸課題の実行および促進を迫るために、経済界と個別企業への支援・奨励および監督・指導を強める。
2.わけても、採用・就職活動の早期化・長期化が大学教育にもたらしている様々な弊害を解消するために、就職協定の締結などに向けて要請と指導を強める。
調査結果の全文は、こちら(PDF)