日本経済新聞 大卒「ニート」3万人規模 労働力の質低下懸念

日本経済新聞 2012/08/27

 大学を今春卒業した約56万人のうち約6%にあたる約3万3千人が、進学も就職の準備もしていないことが27日、文部科学省の調査で分かった。大半が「ニート」とみられ、学校から職場へのスムー ズな移行が難しい若年層の課題が浮き彫りになった。ニートの増加は労働力の劣化を招き、生活保護受給者の増大など社会活力の低下も懸念される。抜本的な対策が急務だ。

 文科省の学校基本調査速報によると、今春の大卒者は昨年比1.2%増の55万9千人で、このうち35万7千人が就職した。就職率は63.9%で2.3ポイント増え、2年連続で改善した。同省は大企業志向が強かった学生が中小企業に目を向けた影響が大きいと見ている。

 ただ就職も進学もしなかった約8万6千人の現状を初めて調べたところ、就職の準備をしている人は57.1%の約4万9千人にとどまった。進学の準備をしている3600人も除くと、約3万3千人が就職や進学に備えた活動をしていない。男性が約1万8千人、女性が約1万5千人に上り、家事手伝いやボランティア従事者なども含まれるが、いわゆるニートが大半を占めるとみられる。

 全国に約60万人といわれるニートは高卒者や学校中退者が多いとみられていた。大学の新卒者でも数万人規模に上ることが分かり、問題の深刻さが鮮明になった。

 三菱UFJリサーチ&コンサルティングの横山重宏主任研究員は「就業しないまま年を重ねると、職探しがより難しくなる」と指摘する。都内の30歳男性は大学卒業後に勤めた会社をやめて7〜8年がたつ。収入はなく親と同居。「働きたい気持ちはあるが、仕事を長く離れ、他人との会話が不安」と打ち明ける。

 企業などで職業訓練を受けないニートが増えると、日本の労働力全体の質が下がる懸念がある。就職した同世代との経済格差が拡大し、いずれ生活保護受給者になりかねない。結婚や子育てが困難な人が増え、少子化が一段と深刻になる可能性も指摘されている。

 政府は専門の相談員がニートなどの若者の自立を支援する「地域若者サポートステーション」の拡充を急いでいる。11年度は全国110拠点に約37万6千人が来所したものの、就職などの進路が決まった人は約9700人にとどまった。

 横山氏は「研修の場の提供など民間企業を巻き込んだ支援を進めるべき。成長産業の育成などで雇用を生み出すことも重要」と言う。

 調査では就職者の6.2%にあたる約2万2千人が契約社員や派遣などの非正規雇用になっていることも分かった。正社員を希望したものの内定を得られず、契約社員などを選んだ人も多い。アルバイトなど一時的な仕事に就いた人も含めると、新卒者のほぼ4人に1人の12万8千人が安定的な仕事に就けていない。

 新卒者の進路を学部系統別にみると、文系で無職やアルバイトの割合が多かった。人文科学は25.2%、社会科学は21.8%だった。理学と工学は4割前後が大学院に進学しており、無職や非正規雇用の割合は10%台で比較的低かった。

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