厚生労働省の調査で「追い出し部屋」は確認されなかったものの、誤認されかねないケースもみられた

Moneyzine 2013年2月9日

 厚生労働省は「退職強要の有無等に関する調査」を実施し、その内容を1月29日に公表した。この調査は、製造業大手企業などで「追い出し部屋」などと呼ばれる部署が存在し、転職を勧めるケースや退職を迫るケースなどがあるとの報道があり、その実態を把握するために実施された。調査対象となったのは、「追い出し部屋」について報道された複数の大手企業で、厚生労働省の職員が直接聴き取る方法で行った。
 
調査結果によると、業務量が減少したことに加え回復の見込みもないことから、一定の従業員を集め、それまでの業務とは異なる業務をさせている部署の存在が確認された。
 
具体的な内容をみると、「他社に外注していた業務を内製化し、取引先から請け負った社外の業務と一緒に従事させている部署がある企業」や、「技術の進歩やデジタル化で縮小される業務に従事していた社員を集め、新たな業務に就かせるための研修を行う専門の組織を設けている企業」「事務効率化のため、事務手続きを専門的に行う部署を設けている企業」「出向先開拓業務を専任させる担当者を配置している企業」などがあったという。
 
また配属に際して、意図的に遠隔地の事業所へ配属させる事例は確認されなかったものの、労働者の定期の人事異動や事業所の閉鎖と同時に配置換えになった事例が確認された。その際の賃金は変わらないとする企業がある一方、職務が変わることで以前より賃金が低下する企業もあった。
 
こうした実情を踏まえ、厚生労働省は「明らかに違法な退職強要を行っている企業はなかった」としている。ただし、「経営状況が悪化してやむなく労働条件の変更や雇用調整を行わなくてはならない場合であっても、法令や労使間で定めたルールを遵守することはもちろん、事前に十分な話し合いを行うことなどが必要」などと指摘した。
 
本調査を踏まえて、同省は「厳しい経営環境の下での労務管理のポイント」と題した指針を示した。また、今後の対応として、産業雇用安定センターが行う出向・移籍のあっせんサービスの活用促進、企業自身による再就職援助の要請、ハローワークによる関係機関と連携した再就職支援を行うことなどを挙げた。
 
本調査を見ると、労使それぞれの立場によって、その捉え方が微妙に異なっている様子がうかがえる。同省が指摘するように、労使双方が法令やルールをしっかり理解・遵守し、十分な話し合いを行うことが重要なポイントになりそうだ。

この記事を書いた人