ベースアップない大企業
パートの時給もダウン
安倍晋三首相は、17日の党首討論で、政府の要請をうけて賃上げする企業がどんどん増えて、政権発足からわずか3カ月でたちまち改善しているかのような発言をしました。これは事実に反するごまかしです。いま進行中の春闘の回答状況などをみても、大手でも中小でもとても賃金が上がったといえる状況ではありません。
まず大手はどうでしょうか。経団連が発表した東証1部上場企業(500人以上規模)の回答・妥結状況をみると、製造業の平均月額が6204円増です。前年比1・96%増ということですが、金額では前年の回答額よりマイナス115円というきびしさです。非製造業は6201円で、前年比1・81%増、プラス494円です。
この金額は、年齢が一つ上がるごとに自動昇給する、いわゆる定期昇給分を含むとしており、本来の賃金の上積みであるベースアップがなかったことを示しています。大手企業の賃金回答はすでに終了しており、アップする見込みはもうありません。安倍首相の要請などどこ吹く風で、賃上げを抑えたのが大企業の実態です。
中小企業はもっときびしい状況です。連合が16日に発表した回答集計(300人未満規模)によると、妥結額が平均4179円です。これは前年に比べて率で0・10%、金額で397円下回っています。このように日本の企業の約7割といわれる中小企業で働く労働者の賃金はまったく改善されていません。
派遣やパートで働く労働者はどうでしょうか。
リクルートの調査によると、三大都市圏(関東、東海、関西)の3月の派遣の平均時給は1475円で、前年同月比でマイナス5円、前月比マイナス4円です。さらにアルバイト・パートの時給も最新の2月の調査では、平均時給が941円で、これも前年同月比1円、前月比3円低くなっています。
このように労働者の賃金は、全体として抑えられて、上昇の方向が見えないままです。賃金が上がっているかのような安倍首相の主張は、どこにも根拠がありません。もともと安倍首相の経済対策は、「企業がいちばん活躍しやすい国」づくりであって、賃上げや安定した雇用確保など働くものへの政策がありません。
安倍首相がウソの賃上げ宣伝を声高につづければつづけるほど、実態とのあまりの違いが労働者から見破られ、批判にさらされることになるでしょう。(昆 弘見)