日本経済新聞 2013/11/25
地方公務員の遺族補償年金の受給資格で男性にだけ年齢制限の規定が設けられているのは「法の下の平等を定めた憲法に違反する」として、公立中学教諭の妻(当時51)を亡くした堺市の男性(66)が、地方公務員災害補償基金(東京)に年金不支給処分の取り消しを求めた訴訟の判決で、大阪地裁(中垣内健治裁判長)は25日、規定は「違憲」として不支給処分の取り消しを命じた。
厚生労働省などによると、遺族補償年金の受給資格をめぐる男女差を違憲とした判決は初めて。同様の規定がある他の年金制度のあり方にも影響を与えそうだ。
判決は「共働き世帯が一般的な家庭モデルとなっている今日においては、配偶者の性別で受給権の有無を分けるような差別的取り扱いは合理性がない」と指摘した。
1967年施行の地方公務員災害補償法では、夫が公務災害で死亡した場合、妻には年齢に関係なく、平均給与額の最大245日分の遺族補償年金を毎年支給すると規定している。
これに対し、妻が死亡した場合の夫の年金受給資格は「60歳以上」と限定。現在は特例で、夫も「55歳以上」であれば年金支給が認められているが、「55歳未満」の場合は一時金として平均給与額の1千日分などしか支給されない。
訴状によると、堺市の男性の妻は97年にうつ病を発症し、98年に自殺。訴訟を経て公務災害が認定された。男性は2010年、遺族補償年金を請求したが、妻の死亡時に51歳だったため、11年に不支給処分となり、提訴した。
男性側は「夫側だけ年齢制限を設けるのは、性別による役割分担を固定化させる。憲法にも違反する」と主張。基金側は、男女別の就業状態や賃金の統計データも示した上で「自活能力の差異に着目した規定で、単純に性別によって区別してはいない」と反論した。