朝日新聞 2013年12月1日
写真(省略)・図版合同企業説明会の各企業ブースには、採用担当者らの説明を聞こうと大勢の学生たちが詰めかけた=1日午前、東京都渋谷区、池永牧子撮影
写真・図版(省略)2015年春に卒業を予定する大学3年生らの就職活動が1日に解禁された。全国各地で始まった合同企業説明会は、スーツ姿の就活生であふれかえった。
東京都渋谷区であった合同説明会では一時、会場に入るために1千人以上が並んだ。先頭の文系男子学生は午前6時半に着いた。広告業界が志望で、「不安はあるが、がんばります」。大学のバスで約100人の同級生と来た尚絅(しょうけい)学院大(宮城県)の長岡彩(あや)さんは「就活に熱心な東京の学生をみて、自分にハッパをかけたい」。
早稲田大(東京都)もこの日、早大生限定の合同企業説明会を開いた。大学院1年の理系男子学生は「採用数が増えそうとは聞くけど、楽観はしていない」。
1日にインターネット上にオープンした五つの就職情報サイト(リクナビ、マイナビ、日経就職ナビ、朝日学情ナビ、エン学生)では、採用情報を出した企業数が昨年の同時期より約2割増の延べ約3万800社になった。企業の採用意欲は高まりつつある。
12月1日の就活解禁は今年までで、16年3月卒業予定の今の2年生は15年3月解禁になる。学業への影響を心配した政府の要請で、経団連が遅らせた。
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大阪・南港であった説明会には、約2万4千人の学生が来場。会場に入る段階で順番待ちの列ができ、甲南大3年の樋口未和子さん(21)は「こんなにたくさん来るなんて」。大阪国際大3年の伊勢本真子さん(20)は「企業が女性の活用に積極的になっていると聞いて、がんばろうと思った」と自分を奮い立たせていた。
近くでは別の合同説明会も開かれ、周辺では黒いスーツ姿の若者が目立った。
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福岡市中央区のヤフオクドームであった説明会では、午前10時の開場の前から多くの学生が並び、約1万5千人が入場。関心のある企業のブースで説明に熱心に耳を傾けていた。
福岡県筑後市出身で島根大3年の光安弘憲さん(21)はこの日朝、バスで福岡に到着。話を聞きたい半導体や機械関係の約10社の名前をノートに書きこんで臨んだ。「採用枠が増えるみたいなので、今年はチャンスかな、と思います」
演劇関係の仕事がしたいという福岡女学院大3年の三苫春花さん(20)は「企業のセミナーで話を聞いたうえで志望先を絞り込みたい」と話していた。
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【奈良部健】名古屋市港区のポートメッセなごやで、午前10時から始まった説明会には全国から168社が参加した。東海地方は、学生の就職希望先の上位に自動車産業がずらりと並ぶことで有名。23社が集まる自動車業界専門エリアもつくられた。愛知学院大法学部3年の山本翔太さん(20)も「商社志望だが、自動車関連でいい企業がたくさんある。できれば地元で就職したい」と話す。
企業が求めるのは、世界中どこでも働ける競争力のある人材。自動車部品メーカーのフタバ産業(愛知県岡崎市)は「入社した場合、働くのは愛知か海外になります」と説明。学生の地元志向と海外志向の双方に訴える作戦をとる。
今年の大学3年生はバブル経済の崩壊前後に生まれ、競争よりも安定や継続を求める傾向が強い世代。愛知学院大3年の高桑雅和さん(21)も「つらくなっても途中で放り投げないで、最後までやりきる」。食品業界を目指す女子学生(20)は「4年生でも、まだ就職活動を続けている人もいる。企業の採用意欲は増しているというが、あまり期待しないようにしている」と気を引き締める。