財経新聞 2013年12月7日 15:52
記事提供元:エコノミックニュース
ブラック企業の実態が次々と明らかになっている。厚生労働省によると昨年度、過労や仕事上の強いストレスから病気で死亡したり、心の病で自殺するなどして労災認定を受けた人は813人にのぼった(※注1)。「精神障害」による認定件数は、過去最高となっている。
昨年度、労災認定を受けた813人は大きく「身体の病」と「心の病」に分けられる。「くも膜下出血」や「心筋梗塞」などは、過重な労働による「身体の病」だ。死亡したケースを含め、昨年度は338件が認定された。80年代後半以降、世界の共通語となった「KAROSHI」は、厚労省の定義によると「身体的」要因による死亡に限られ、近年増えている「過労自殺」とは区別される(※注2)。
「過労自殺」は厚労省の定義上、「心の病」に分類されている。仕事のストレスで、うつ病などを発症したり、自殺したりといった「精神障害」の認定件数は、昨年度475件と過去最多。支給決定事例で最も多かったのは「仕事内容・仕事量の大きな変化を生じさせる出来事があった」で59件。次いで「ひどい嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けた」が55件となっている。また、最も増加件数が多かったのは「1か月に80時間以上の時間外労働を行った」で、前年度から29件増えた。長時間労働やパワハラによって、精神障害の認定を受ける人が増えているのだ。
これらはもちろん、氷山の一角に過ぎない。日本では毎年3万人が自殺しているが、その中には数多くの「過労自殺」が含まれているだろう。政府は本格的にブラック企業対策に乗り出したが、個々の企業を取り締まるだけでは不十分だ。多くの企業で労働組合が機能していない以上、「労働者を守る」ための抜本的な法改正が必要ではないか。(編集担当:北条かや)
(※注1:厚生労働省、平成24年度「脳・心臓疾患と精神障害の労災補償状況」)
(※注2:厚労省のHPでは、「くも膜下出血などの『脳血管疾患』や心筋梗塞などの『心臓疾患』は、過重な仕事が原因で発症する場合があり、これにより死亡した場合は『過労死』とも呼ばれています」とされている。)