ブラック企業を包囲せよ! 厚労省が対策本腰 離職悩む若者に専用窓口

産経新聞 12月7日(土)

 夜でも土日でも相談して−。若者に長時間勤務など過酷な労働を強いる「ブラック企業」への対策を強化しようと、厚生労働省は来年度から、平日の日中だけ実施している電話相談を夜間と休日にも拡充する方針を決めた。平日昼間しか相談できない態勢に、若者らから「勤務中で電話できない」と批判が起きていた。ほかにも離職に悩む若者の相談に応じる窓口を開設する予定で、来年度予算の概算要求に計約18億円を計上。若者の雇用環境の支援と悪質企業の実態把握に本腰を入れる。

 電話相談は現在、全国各地の労働局や労働基準監督署が窓口となっているが、対応するのは平日の午前8時半から午後5時15分まで。若者らから「長時間労働について相談しようにも、そもそも平日の昼間は働いていて相談する時間がない」などと批判の声が多く寄せられてきた。

 実際、厚労省が9月1日の日曜日に全国で実施した無料電話相談には1042件の相談があったが、「10回線用意したのに、電話が鳴りっぱなしだった」(大阪労働局の担当者)ほど。厚労省は長時間・過重労働を強いられている若者らがいつでも相談できる受け皿を作ろうと検討を始めた。

 厚労省によると、従来の平日昼間の電話相談は有料のケースもあるが、新たに設ける夜間・休日用の電話相談はフリーダイヤルとする予定。労働相談のノウハウや実績がある民間団体に委託する方向で調整している。担当者は「過重労働や残業代の不払いなど法令違反の企業に迅速に対応したい」と期待している。

 一方、東京、名古屋、大阪にある「わかものハローワーク」では、若者の高い離職率を改善しようと、就職後も若者の相談に職員が応じる専用窓口を来年度から常設する方針だ。厚労省によると、平成22年に卒業した大学生で約31%、高校生で約40%、中学生で約62%が3年間のうちに会社を辞めたが、これまでは専用窓口はなかった。

 担当者は「特に、中小企業に入社した若者は同期も少なく、1人で悩んでしまうことが多い。気に入らないことがあると安易に会社を辞める若者もいるが、辞める前に話をじっくりと聞き、アドバイスする窓口が必要」と指摘する。

 厚労省ではこのほか、労働関係の法令について説明するセミナーや法令の基礎知識をまとめたサイト設置などの施策も進める方針で、担当者は「あの手この手を尽くし、若者への支援と『ブラック企業』など悪質な企業の包囲網を作りたい」と話している。

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