建設業界、外国人雇用を積極化 人手不足・五輪需要で新たな動き

SankeiBiz+Express 2014.1.5 08:30

 東京五輪の施設工事が本格化するのを前に、建設業界で「外国人技能実習制度」などを活用し、これまで消極的だった外国人の雇用へとかじを切る動きが広がっている。技能労働者(熟練工)が高齢化し、建設現場に入ってくる若者の減少にも歯止めがかからないためだ。

 専門技術も担わせる

 ゼネコンや下請けの建設業者の多くはこれまで、外国人の雇用に消極的だった。「言葉の壁もあり、技能習得は簡単でない」(大手建設会社の現場所長)というのが理由だ。東京都内の下請け会社は「難しい作業でけがや失敗をされたら困る。海外からの実習生には安全で簡単な作業を割り当てることが多い」と話す。

 最近は建設現場の人手不足が深刻になり、「実習生を雇い入れたいと希望する業者が急増している」(準大手ゼネコン幹部)という。技能実習の本来の目的である専門技術を外国人に担わせる会社も増えている。

 ベトナムからの実習生を受け入れている向井建設(東京)は、2012年から現地で職業訓練校を開いている。倍率3〜4倍の試験で選ばれた合格者に、高所作業、鉄筋、型枠の3職種を日本の熟練工が実地で指導する。

 日本語や数学の授業もあり、約4カ月間訓練し、日本に技能実習生として送り込んでいる。向井建設の向井●(=矢の大が母、右に攵)雄会長は「きちんと訓練を受けた実習生はゼネコンも安心して採用してくれる」と語る。

 向井建設が訓練した実習生は、大手ゼネコンが東京・銀座で手掛ける13階建ての商業ビルの建設工事に参加する。帰国後は、現場の作業員の指導や監督をする立場になる予定だ。

 実習生を受け入れる場合、企業は給料や渡航費などを含めた実習費や宿泊費の一部を負担する。建設関連団体によると、実習費は1人当たり3年間で700万円余りとされる。

 政府内に強い慎重論

 法務省によると、01年度から12年度までに建設分野の技能実習を申請した外国人は累計4万2557人。繊維業や機械・金属業が12年度に受け入れた技能実習生は、それぞれ1万人を超えたが、建設業では4500人程度にとどまった。

 ベトナムと日本政府は13年3月、建設分野の人材育成で協力することを申し合わせた。国土交通省は、外国人実習生の受け入れ拡大が決まれば、「ベトナムから多くの若者が実習に来るだろう」とみている。

 ただ、外国人の雇用を歯止めなく増やすことには、政府内で慎重論が強い。08年秋のリーマン・ショック後の不況で、ブラジルなどから来日していた外国人労働者が大量に職を失い、集住地域は混乱した。帰国支援や失業保険給付などの財政負担も生じた。

 外国人労働の範囲を広げれば、外国人は雇用の調整弁になる可能性があり、「単純労働の解禁などに踏み込むのはハードルが高い」(内閣府幹部)とみられる。(SANKEI EXPRESS)

 ■外国人技能実習制度 入管難民法に基づき、国内企業が「技能実習生」として受け入れる制度。1993年につくられた。建設、繊維、機械・金属、農業、漁業、食品製造などの68職種を対象に、製造・加工技術や機械操作などを学ぶ。実習期間は最長3年。単純労働に使うのは禁止されている。実習費(賃金)の不払いなどの問題が相次いだため、政府は2009年に法令を改正。企業に対し、実習生と雇用契約を結び、日本の労働法令を守ることを義務付けた。

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