朝日新聞 2014年3月20日
首都圏の公共交通機関で20日、賃上げを求める運転士らのストライキがあり、始発から鉄道やバスの運休が相次いだ。東京都中野区の関東バスでは10年ぶりとなる24時間ストに突入。横浜市の相模鉄道、相鉄バスでも早朝の通勤客らに影響が出た。雨が降る中、足止めをくった利用客からは不満の声が上がった。
関東バス労働組合(組合員844人)は、春闘の労使交渉で賃上げを求めたが会社側と妥結できず、午前5時20分の始発から24時間ストに入った。同社によると、ストが続けば都内の中野区や杉並区、武蔵野市を中心に9273本が運休となり、15万人に影響が出る見通し。24時間ストは2004年3月以来という。
午前10時前。JR三鷹駅のタクシー乗り場に、傘をさした50人近い行列ができた。バス停には「24時間ストライキ決行」と紙がはられ、警備会社の男性が利用者にスト決行の状況を説明していた。八王子市の会社員男性(38)は「迷惑。しかも雨だし。うちの会社ではこんなことしない」と憤った。取引先にバスで向かう予定だったが、約20分待ってタクシーに乗った。
三鷹駅から約2キロ離れた武蔵野市役所にも、朝からタクシーで訪れる人が目立った。江東区のシステムエンジニアの男性(34)もタクシーで来るはめになり、予定に15分遅刻した。「公共交通機関のストを経験したのは初めて。帰りも心配。早く解消して欲しい」
関東バス労働組合の鈴木章介書記長は「安倍政権の賃上げ要請で、大手企業ではベースアップが続いている。今期は過去最高益を見込めるのに、会社側は労働時間の延長なしには賃上げしないと言う。利用者には申し訳ないが、ストを決行した」と理解を求めた。
相鉄ホールディングス、相模鉄道、相鉄バスの3社の労働組合(組合員1806人)は20日始発からのストを午前6時半に解除。電車とバスは午前7時から順次運行を開始したが、約6万人が影響を受けた。
会社側によると、労働協約の改定と賃金をめぐる交渉が続いていたが、始発までに妥結せず、ストを回避できなかった。相鉄とバスのストライキは2009年6月以来。
相鉄と小田急が乗り入れる大和駅では、自動改札機や券売機、モニターなど構内のあちこちに「スト決行」と書いた紙が張られ、隣には「小田急は平常通り運行しています」との掲示があった。
午前6時前から窓口や改札に人だかりができ、振り替え輸送ができないと分かると「自分でいけというのか」「料金返せ」「放送ぐらいしろ」などと怒号が飛んだ。ストの張り紙をはがして投げつける男性もいて混乱した。