亡き息子の声聞こえた 過労死防止法案衆院通過に遺族

神戸新聞NEXT 2014年5月27日

過労死防止法案の衆院通過を受けて会見する西垣さん(左)ら=27日午後、
厚生労働省(写真省略)

 「おかん、よく頑張ったな」‐。過労死を防ぐ国の責務を明確にした「過労死等防止対策推進法案」が採決された27日の衆院本会議。可決の瞬間を傍聴席で見守った全国過労死を考える家族の会兵庫代表の西垣迪世さん(69)=神戸市=は、息子が声をかけてくれたような気がした。「成立するまで、もう少し息子に応援してもらう」。悲願の法律制定に向け最後まで努力を続けることを、母はあらためて誓った。

 西垣さんは2006年、一人息子の和哉さん=当時(27)=を過労が原因で亡くした。

 本会議後、防止法制定を訴えてきた家族の会の仲間とともに、厚生労働省内で会見。傍らには、傍聴席で胸に抱いていた和哉さんの遺影を置いた。

 「親として息子が戻ってこない悲しみはあるが、それでも法案の衆院通過は本当にうれしい」と涙ぐんだ西垣さん。「過労死で息子や娘を亡くした親がどれほど苦しい思いをしているか。亡くなった息子や娘は、どんな思いでこの世を去り、私たちにどんな信号を送っているのか。そのことを考えてきた」とこれまでの活動を振り返った。

 遺族や労働問題に詳しい弁護士らと12年に「過労死防止基本法制定兵庫実行委員会」を結成。防止法を求める意見書の採択を県内地方議員に働きかけ、兵庫県議会が都道府県議会で初めて、神戸市議会が政令市議会で初めて可決した。何度も街頭に立ち、県内で東京に次ぐ約7万6千人の署名を集めた。全国では約55万人の署名が集まり、議員立法の大きな原動力となった。

 法案は参議院に送られるが、今国会の会期は6月22日までと残り少ない。家族の会東京代表の中原のり子さん(58)=東京都=は「ここでぬか喜びしている場合ではない」と表情を引き締めた。

 参院議員への働きかけを続けるという西垣さんは「法案には不十分な点もあるが、過労死のない社会を目指して一日も早く成立し、対策が実施されることを切に願います」と訴えた。

(段 貴則、中部 剛)

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