毎日新聞 2014年06月16日 21時57分(最終更新 06月17日 05時35分)
成長戦略で日本経済を強くできるのか(図表省略)
政府の産業競争力会議が16日まとめた成長戦略「日本再興戦略」改定版の素案は「稼ぐ力=収益力」の強化で国民生活の向上を目指す方針を示した。また、前年の戦略で積み残しの課題になった女性の活躍促進▽外国人材の活用▽農業の生産性拡大−−などで新たな目標や改革の方向性を提示した。分野別に成長戦略のポイントと課題をまとめた。
成果のみで賃金が決まる対象者(図表省略)
雇用政策の目玉として、働いた時間ではなく成果に応じた賃金を払う新制度を創設する。「職務が明確で高い職業能力がある人」で「少なくとも年収1000万円以上」の従業員が対象。為替ディーラーやファンドマネジャーなどを想定している。導入企業は労使合意のうえで本人も同意すれば対象となり、全労働者の数%に絞られる見通し。
労働基準法では「1日8時間、週40時間」を労働時間と定め、この時間を超えて業務をした人には管理監督者を除き残業代の支払いを義務づける。新制度は、特定職種や一定以上の年収の人を対象にこの規制を外すもので、成果に応じた賃金体系に変え、国際競争力を高めたい企業側の意向を強く反映した。
第1次安倍政権時の2007年には「残業代ゼロ法案」と批判されて撤回に追い込まれた「ホワイトカラー・エグゼンプション(労働時間法制の適用除外)」と呼ばれた制度と類似する内容で、「働き過ぎを助長する」との声も根強い。
このため、政府は労働基準監督署の指導を徹底するといった対策も講じる方針だ。しかし、労使が参加した16日の労働政策審議会(厚生労働相の諮問機関)では、労働者側が「過重労働防止策も論じられていない中で適用除外を議論するのは順番が逆だ」と反発。具体的な年収設定や対象職種の決定までには難航が予想される。【中島和哉】