物流Weekly 2014.06.19
東京労働局は、都内のトラック運送事業者を対象に、昨年1年間に実施した臨検監督の結果、「8割近くで労働基準法違反が認められた」ことを明らかにした。また、4割以上で改善基準告示違反も発覚。タンクローリーのドライバーが運転中、がけ下に転落して死亡する事故があったケースでは、1か月80時間を超える違法な時間外労働が認められ、その会社と社長を書類送検した。トラック運送事業は、ドライバーを中心に長時間労働が常態化し、過労死や過労自殺など「過重労働による健康障害」の発生も目立つ。
こうした長時間労働の抑制、過重労働による健康障害防止を目的に、東労局は昨年、管下18労働基準監督署(支署)で、都内195事業場を対象に臨検監督を実施。その結果、75.9%に当たる148事業場で労働基準法違反が判明した。違反別では「労働時間」違反が101事業場(51.8%)、「割増賃金」違反は62事業場(31.8%)、「法定休日」違反が4事業場(2.0%)など。
改善基準告示違反は、44.1%に当たる86事業場で認められ、「最大拘束時間」違反が63事業場(32.3%)、「総拘束時間」違反が57事業場(29.2%)、「休息期間」違反が33事業場(16.9%)、「連続運転時間」違反が21事業場(10.8%)、「最大運転時間」違反が10事業場(5.1%)などとなっている。
労災請求を契機に、長時間労働の疑いのある食品配送会社を臨検したところ、脳出血で死亡したドライバーは死亡直前6か月間に、毎月100時間を超える時間外労働(最長月は188時間)を強いられ、改善基準告示で定める1か月の最大拘束時間(293時間)も超えていた。
労働条件通知書の交付はなく、「所定労働時間が明確に定められていない」など、基本的な労働条件も整備されていなかった。初違反のため法令違反に対する是正勧告を実施するとともに、労働条件に関する規定の整備や労働時間管理、拘束時間の削減、長時間労働者への医師による面接指導などを指導したという。
タンクローリーのドライバーの場合は、転落死亡事故からの災害調査をきっかけに発覚した。当該会社の社長には過去にも「法定労働時間に関する違反」で是正勧告を行っており、「繰り返しの違反が認められた」ことから労政Gメンによる捜査に着手。書類送検となった。
東労局の伊岐典子局長は「今後も重大または悪質な事案に対しては、単に指導に終わらず司法処分など厳正な対処を行っていく」と話している。