毎日新聞 2014年10月17日
大手複写機メーカーのリコー(東京都中央区)で、子会社へ出向を命じられた社員が「退職勧奨を拒んだための命令」として無効を訴えていた問題で、社員が加入する東京管理職ユニオン(鈴木剛委員長)は17日、会社側と命令を撤回する和解が成立したことを公表した。命令無効で提訴した8人の組合員の他に、提訴していない組合員や労組に加入せずに出向を命じられた約80人についても再配置の協議が行われた。代理人の弁護士によると、大規模な出向命令の撤回は非常に珍しいという。
ユニオンによると、組合員らは2011年夏ごろから退職を勧奨され、拒否すると出向を命じられた。13年11月に命令を無効とした判決が出たことをきっかけに会社側との和解交渉が始まり、本人の専門性を生かした再配置で和解した。
茨城県在住の佐久間行則さん(47)は、業務用プリンター設計の仕事をしていたが上司に退職勧奨された。断ると、子会社の東京都内の物流倉庫への出向を命じられた。佐久間さんは慣れないトラックからの荷受けや仕分けなどの作業に従事、3カ月で10キロ体重が減った。約3年倉庫で働き、9月1日に茨城県内の元の職場付近に再配置された。佐久間さんは「納得できる仕事に戻ることができた」と話した。
鈴木委員長は「求められているのは、不合理で非人道的なリストラを制限し、雇用の安定を図ることだ」と話している。リコーは「社員の能力を最大限に発揮できる職場配置を行い、さらなる事業成長に取り組んでまいります」とのコメントを公表した。【東海林智】