裁量労働、一部営業に拡大  厚労省検討、労組は慎重

2015年01月08日 共同通信

  あらかじめ設定した時間だけ働いたとみなして賃金が支払われる裁量労働制について、厚生労働省が対象の一部営業職への拡大を検討していることが8日、分かった。1月に始まる通常国会に労働基準法の改正案を提出する方針。

  安倍政権は労働分野での規制緩和を進めており、一定要件を満たす労働者を労働時間 規制から除外する新制度の導入とともに、裁量労働制の対象業務の拡大を成長戦略に盛り込んでいた。

  ただ、労働組合は「制度を導入しながら、実際には裁量のない働き方をさせている企 業も多い。長時間労働を助長しかねず、安易に対象を拡大するべきではない」と慎重な姿勢だ。

  裁量労働制は時間配分の指示などを受けず、自己裁量で働き方を決められる労働者が対象。商品や技術の研究開発などの「専門業務型」と社内で企画や立案、調査、分析を手掛ける事務系の「企画業務型」がある。厚労省は企画業務型の対象拡大を検討している。

  企画業務型は現場の営業職は対象外だったが、厚労省は金融やITといった業種で、単に既製品を販売するのではなく、顧客のニーズを個別に聞いて商品を開発、販売する「提案型営業」については、各労働者の裁量が大きいと判断した。

  一方で厚労省は、あらかじめ出退勤時間を決めてしまうなど、制度の目的に沿わず裁 量を与えていない企業が多いとして改善を求める。健康確保のため、対象者に医師の面接指導を受けさせることを導入時の要件とする案も検討している。

裁量労働制

 裁量労働制 実態にかかわらず一定時間を働いたとみなす制度。みなし時間を超えて働いても残業代が支払われない点は、安倍政権が導入を目指す労働時間規制の適用除外制度と同じだが、深夜や休日の労働に割増賃金が支払われる点が異なる。2類型あり「専門業務型」は法令で対象となる仕事の種類が明示されている。一方、企画や調査などに携わる事務系の「企画業務型」は対象が具体的でなく乱用の恐れがあるため、導入には本人の同意を必要とするなど、手続きや要件が厳格。

 

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