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大阪日日新聞 2015年10月28日
「時給が高いアルバイト」として塾講師は学生に人気のアルバイトだが、授業時間帯の前後の準備や報告書作成、授業時間外の相談業務などには賃金が支払われない「教育ブラックバイト」問題があるとして塾講師の労働環境の悪化がクローズアップされている。環境改善を求めて労働組合が結成され、厚生労働省も改善要請に乗り出している。
「残業代は?」「最低賃金は?」「自由に休めない…」などの不透明な労働環境も
■団体交渉申し入れ
ブラックバイトというと、居酒屋やファストフードなどを思い浮かべるが現実は違う。元塾講師の男性は「ブラックバイトユニオンが発足から受けてきた約350件の相談中、約3割が塾や家庭教師などの教育産業で、そのほとんどが個別指導塾」という。
こうした中、今年6月、学生のアルバイト塾講師を中心とする労働組合「個別指導塾ユニオン」が結成された。そして、個別指導塾ユニオンは東京都内で学習塾を運営する「代々木個別指導学院」など3社に団体交渉を行うよう、申し入れを行った。同ユニオンでは今後も同様の活動を進める方針という。
塾講師は時給の高さとやりがいのある仕事で人気の職種だが、実際に働いている人の環境はさまざまだ。
今回、組合が結成される背景となった、塾講師をしている学生の主な悩みは、「人手不足のため、休みたくても休めない」▽「辞めたくても辞めさせてもらえない」▽「授業の前後に準備や採点などのために働いても、残業代が支払われない」−など。
一方で塾の講師は「長く続けるほど生徒に愛着も湧き、何とか受け持ちの生徒の学力をアップさせたい」という思いが生まれやすく、やりがいを持ちやすい仕事でもある。
■厚労省も改善要請
厚労省も学習塾業界に、適正賃金を支払うよう要請していたことが明らかになっている。問題とされているのは、残業代などの割り増し賃金の未払い、最低賃金以下の給与の未払いなど。
具体例としては、授業開始前の会議参加、カリキュラム作成の時間、1日の法定労働時間オーバーなどが挙げられる。
こうした要因が離職原因にもなっており、全国的な課題となっている。厚生労働省によると、全ての職種の中で「教育・学習支援産業」の離職率は5割弱と全業種のワースト3に入るという。
■改善への取り組み
こうした中で、スタッフ(講師)の満足度ややりがいなどの向上に取り組み、低い離職率を実現している事業者も現れている。
関西地区で学習塾「個別指導キャンパス」を展開する新教育総合研究会(本社・大阪市北区東天満)では、低離職率を維持する独自の雇用体制に取り組んでいる。
同社では「生徒の成績を上げるのが塾の使命」として、その生徒を指導する講師が学期途中で代わらないことが最重要課題となっている。このため、社員間の満足度アンケートやバーベキュー大会などの交流や同社の経営精神などの目標を共有するなど、講師が長く続けられる人材育成に力を入れる。
社長の福盛訓之さんが大学在学中に個別指導塾を起業し、現在では社員数が約200人、生徒数は約1万人までに成長。福盛社長は「人材育成に力を入れることで離職率が低くなり、企業の成長にもつながった」と振り返っている。