説明会の合間には、企業側から就職活動中の学生らにPRする時間もあった=1日午後、大阪市北区、小林一茂撮影(写真省略)
来春卒業する大学生の就職活動で、企業の選考活動が1日解禁された。学生有利の「売り手市場」が続くなか、企業は待遇を良くすることで魅力アップを図る。企業と学生の接点をつくる取り組みも進む。
1日、大阪・梅田の新卒者向けのハローワークで開かれた合同企業説明会。京都女子大の学生(21)は既に2社から内々定をもらったが、「もう少し視野を広げたい」と海外事業に積極的な企業の説明を聞きに来た。奈良大の男子学生(22)は5社の選考に残っているが内々定はまだで「少しあせっています」。
リクルートキャリアの調査では、5月1日時点での就職内定率は35%で前年同月を10ポイント上回った。近畿でも内定率30%で5ポイントほど高かった。6月解禁は経団連が定めた指針だが、拘束力はない。ある大手メーカーは「6月前にすでに選考を終え、『内々定』の学生は決まった」と明かす。
新卒の奪い合いが激しくなるなか、企業側は待遇改善で学生へのアピールを強める。みずほ証券は来春入社の初任給を引き上げる。2年連続の上昇で「優秀な人材を採用につなげる」(同社)ねらいだ。大林組や積水ハウスも今春、初任給を上げた。引っ越し大手のアートコーポレーション(大阪府大東市)は、これまで引っ越し部門は不定休だったが、今夏から定休日を設けることにした。
大企業ほどコストをかけられない中小企業も手をこまねいているわけでない。産業用機械メーカーの山田製作所(大阪府大東市)は社長が大学に足を運んで、中小の合同説明会に参加。この数年苦しんでいる新卒の採用をめざす。大阪市の靴下販売会社は外国人留学生にも注目する。
各大学も、人材確保に悩む中小企業との接点をつくろうと力を入れる。
関西学院大では5月22日から26日まで大阪梅田キャンパスで学内説明会を開催。3月は大手中心だったが、5月は主に中小を集めた。小山裕正キャリア支援課長によると、各社の選考が早くなって不安になる学生もいることから、中小の説明会を昨年より2週間ほど早めたという。大手メーカーを中心に就活していた法学部4年の女性(21)は、中小に対して「専門性があり今後伸びていきそうな会社と感じた」と話す。小山さんは「まだ内定を得ていなくても、あせらず、力のある中小企業に目を向けてもらいたい」。関学ではこうした説明会を10月まで定期的に開く予定だ。
立命館大も企業と学生の接点をつくろうと、学内の企業説明会を昨年より増やして開催するという。(新田哲史、近藤郷平、沢木香織)