BBC女性編集長が抗議の辞任 男性と給与差に反発拡大

写真・図版:ロンドンにあるBBC本部の正面玄関=ロイター(省略)
 男女の報酬格差を巡り、英国の公共放送BBCが揺れている。女性の中国編集長が同僚男性との格差を「差別」と抗議し、辞任。これを受け、高額報酬を得ていた著名な司会者ら男性6人が、自発的な減額を申し出た。BBCは性差別を否定しているが、社内の女性たちの反発はやまない。
 「男性の同僚たちと平等に中国での仕事を評価してほしいだけ」「私たちが私たち自身を誠実に見つめられないなら、何かを誠実に伝えていると信頼してもらえるわけがない」「怒り、落胆し、BBCの将来に絶望的な不安を感じている」
 英国議会の委員会で1月31日、前中国編集長のキャリー・グレイシーさん(55)は議員からの質問に答えた。「差別」との訴えを問題視した議会が意見を聴く場を設けた。トニー・ホールBBC会長も証言を求められたが、グレイシーさんを「一流の仕事をしてきた」と称賛しつつ、担当地域により仕事の質や量には違いがあり、報酬格差は性差別ではないと主張した。
 英国では2010年に成立した「平等法」に基づき、官民ともに従業員が250人以上いる場合、男女の賃金格差を公表しなければならない。BBCは昨年7月、BBCと役務契約を結び、同年3月までの1年間で15万ポンド(約2300万円)以上の高額報酬を得た司会者や記者ら出演者の名前と報酬額を幅を持たせて公表した。3分の2が男性で、最高は平日朝のラジオ番組に出演するクリス・エバンズさんで220万ポンド(約3億4300万円)台。女性の最高は社交ダンスコンテストの番組の司会をするクローディア・ウィンクルマンさんで、45万ポンド(約7千万円)超だった。
 グレイシーさんはBBC記者歴30年以上で中国語が堪能。13年に中国編集長に就任。現在はロンドンのニュース編集局に所属する。報酬は13万5千ポンド(約2100万円)だった。欧州編集長の女性もリストに名前がなかった。だが、北米編集長の男性は20万ポンド(約3100万円)台、中東編集長の男性は15万ポンド(約2300万円)台だった。グレイシーさんは格差に落胆したとして、1月初めに中国編集長を辞任。「秘密にされ違法な給与体系」と批判声明を出した。
 グレイシーさんは31日の議会証言で、BBCが先週、14〜16年の「報酬未払い分」として約10万ポンド(約1500万円)を支払いたいと伝えてきたが、断ったと明かした。BBC側は報酬が少なかった理由としてグレイシーさんが「成長の途上だった」と説明したという。グレイシーさんは「傷口に塩を塗る侮辱だ。経験豊かな女性にそのような物言いは受け入れられない」と語った。
 一方、BBCでは、北米編集長を含む男性6人がすでに報酬の自主的な減額を申し出た。このうちニュース番組の司会者ジョン・ハンフリーズさんの報酬は60万ポンド(約9300万円)台。減額幅は明かしていないが、半額程度になるとみられ「大幅に減るが依然として大金だ。これが公正だと思う」と話している。
 BBCは先月30日、賃金のあり方に関する外部調査報告を公表。賃金の決定過程に性差別は確認されなかったが、透明性に欠けると指摘された。BBCの女性出演者ら約200人が名を連ねる団体「BBCウーマン」は、検証の仕方が不透明だと反発している。(ロンドン=下司佳代子)
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 〈BBC=英国放送協会〉 1922年に無線通信会社の企業連合として発足し、27年に公共事業体に。英国内外でテレビ、ラジオ放送やインターネットのサイトを展開。国際テレビ放送は200以上の国と地域で24時間視聴できる。2017年3月期の総収入は49億5400万ポンド(約7728億円)で、うち76%は視聴者に義務づけられた「受信許可料」(年約2万3千円)。職員数はグループ全体で約2万1千人。

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