法案作成関与の審議会に不適切データ提示 裁量労働調査

衆院予算委で、立憲民主党の長妻昭氏の質問への安倍晋三首相の答弁内容に対して、委員長席に集まる与野党の理事ら=20日午前11時49分、岩下毅撮影(写真省略)
 安倍晋三首相が裁量労働制に関する国会答弁を撤回した問題で、働き方改革関連法案の作成にかかわる厚生労働省の労働政策審議会に、不適切な調査データを含む資料が示されていたことが分かった。20日午前の衆院予算委員会で、立憲民主党の長妻昭代表代行が指摘した。
安倍首相、責任は厚労省と認識 裁量労働制の答弁撤回

問題の資料は厚労省が2013年10月に労政審に提出した「労働時間等総合実態調査」。一般労働者の平均的な人の1週間の残業時間を平均2時間47分と記載しているが、これは1カ月のうち残業時間が「最長の1週間」を集計した値だった。長妻氏は「労政審でこうした説明がなかった」と指摘した。加藤勝信厚労相は「(労政審の)委員がどこまで理解していたかは承知していない」と述べるにとどめたが、厚労省は問題の経緯を説明した19日の記者会見で労政審に資料を提出したことを認めている。
 菅義偉官房長官は19日午前の記者会見で、不適切に比べた問題のデータは「労働政策審議会の審議には提供していない」とした上で法案提出、成立の方針に変わりはないと強調した。
 一方、安倍首相は不適切なデータを元に答弁した理由について「厚労省から上がってきた答弁にデータがあったことから、紹介した」と述べた。長妻氏の質問に答えた。首相は問題になった答弁をした経緯について「私や私のスタッフから指示を行ったこともない」とし、首相官邸側の関与を否定した。「厚労省の所管に属する事項は本来、厚労省において責任を持って資料を作成すべきだ」とも語り、責任はあくまで厚労省側にあるとの考えを示したが、長妻氏は厚労省に責任を転嫁するような姿勢に「無責任だ」と批判した。
 加藤氏は「心からおわびを申し上げたい」と述べ、答弁の根拠となるデータが不適切だったことを改めて謝罪した。自民党の阿部俊子氏の質問に答えた。

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