事例紹介 太田労基署 スバル群馬製作所員の自死労災認定

 事例紹介 太田労基署

スバル群馬製作所員の自死太田労基署が労災認定
 月100時間超の時間外労働と上司のバワハラ
 労災認定により3421人の残業代未払いも発覚 
  働くものの健康(社会医学センター)2019年5月10日第464号6頁
 
 2018(平成30)年8月3日、群馬県の太田労働基準監督署は、2016(平成28)年12月に自死したスバル男性社員Aさん(当時46歳)の死亡は、上司からの激しい叱責や長時間労働によって発症したうつ病が
原因であると、労災認定しました。
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 Aさんは1994(平成6)年にスバル(当時は富士重工業)群馬製作所に入社し、2013(平成25)年2月から、水質や土壌などの公害防止や苦情の未然防止にかかわる担当となりました。
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 2016(平成28)年の春頃から、Aさんは、昇進試験の準備や日常業務について、上司の課長から繰り返し指導を受けるようになりました。
 Aさんが亡くなった翌月の2017年1月、遺族のもとへ群馬製作所に勤める従業員の”匿名有志“からの手紙が届きました。
 その手紙には、「日頃から課長席の前に立たされ、業務関係で幾度も大声で叱られ、7階の同僚皆の目の前で課長からパワハラと呼ばれるような説教を受けていた」という記載をはじめ、長時間労働が常態化していたことなどが書かれていました。
 昇進試験のための指導という大義名分があっても、指導の範疇を超えるパワハラがあり、それを目撃した複数の社員は、「部屋の外に聞こえる大声で叱られていた」「上司の前で立たされていた」などと証言しています。
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 Aさんは、2016(平成28)年7月から新工場建設に向けて、業者とのやり取りなどで多忙を極めました。
 勤務記録上は「残業ゼロ」になっていましたが、帰宅前に家族に送ったメールの時刻などから推定された死亡前の時間外労働時間数は、1ヶ月前が124時間31分、2カ月前が100時間39分にも及びました。労基署の認定した時間外労働時間数は、遺族の推定時間数とは差はあるものの、死亡前のlか月間は105時間程度あったものとされました。
 ”匿名有志“からの手紙には、残業を隠蔽するため、午後5時になると一旦退社手続きをし、そのうえで「席に戻り遅くまで仕事をするのが当たり前のようになっている」という記載がありました。
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 2016(平成28)年12月、Aさんは「現状を克服する方法が見つかりません。すべて終わりにするしか、できることがなくなってしまった。」という遺書を残し、群馬製作所の建物7階屋上から飛び降り、亡くなりました。
 労災認定を発表する記者会見では、Aさんの長男(13歳)の「パパがいなくなって、さみしくて、いまは何も考えられない。会社はパパがいなくなった原因を認めて、二度とこういうことが起こらないようにしてほしい」、長女(11歳)の「パパが上司にいじめられている様子を想像すると悲しくて、胸が苦しくなる。会社や上司はこの状況から早く脱したいと思っているのだろうが、私は、このような気持ちから死ぬまで一生逃れることができない」というコメントが、代読されました。
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 スバルはAさんの労災認定後に未払い残業代を認め、2015(平成27)年7月から1年5カ月間の400万円余の追加支給を行っています。
 またスバルは社員の残業代を把握していなかったことがわかり、2015(平成27)年から2017(平成29)年にかけて調査を行い、社員3421人に計7億7000万円の残業代を支払っていなかったことが判明しました。
 調査の中の過少申告の理由については、社員の約6割が「(部署で決めた残業時間の)上限を超えないようにした」と回答していました。
 検査不正を含めてスバルの企業体質が厳しく問われています。 

【関連記事】
□スバル男性社員を労災認定=長時間労働などで自殺−労基署
時事通信 2019年01月24日17時26分
 
 富士重工業(現SUBARU=スバル)群馬製作所(群馬県太田市)の男性社員=当時(46)=が2016年12月、同製作所内の建物屋上から飛び降りて自殺したのは、長時間労働や上司の叱責などでうつ病を発症していたのが原因だったとして、太田労働基準監督署が昨年8月、労災認定していたことが分かった。遺族の代理人弁護士が24日、東京都内で記者会見して明らかにした。
 弁護士によると、男性は1994年入社。12年から公害防止などの業務を担当していた。労基署は、死亡前6カ月で月約35〜96時間、16年11月14日からの30日間では約105時間の残業をしていたと認定した。
 また労基署は、男性が上司の課長から繰り返し厳しい指導や叱責を受け、「(同僚らは)その状態は他の者と比べ特に厳しく、高圧的でパワハラと感じていた」と判断したという。
 
□スバル社員投身自殺 過労と「上司トラブル」で労災認定
産経新聞 2019.1.24 16:07
 
〔写真〕記者会見する玉木一成弁護士=24日午後、東京都千代田区
 
 SUBARU(スバル)の男性社員=当時(46)=が、上司の厳しい叱責(しっせき)や長時間労働を苦に鬱(うつ)病を発症して自殺し、太田労働基準監督署(群馬県)が男性の自殺を労災認定していたことが24日、分かった。認定は平成30年8月3日付。
 記者会見した遺族側弁護士によると、男性は6年にスバル(当時は富士重工業)群馬製作所に入社し、25年2月から水質や土壌などの公害防止にかかわる担当になった。28年12月に「自分の力ではどうすることもできない」との遺書を残し、同所の屋上から飛び降り自殺した。
 労基署は自殺の原因に上司とのトラブルを認めた。男性は28年春ごろから、昇進試験の準備や日常業務について、上司の課長から繰り返し指導などを受けるようになった。目撃した複数の社員によると、「部屋の外に聞こえる大声で叱られた」「上司の前で立たされていた」という。
 同年7月からは、新工場建設に向けて業者とのやり取りなどで忙しく、死亡前の1カ月は残業が124時間に及んだ。勤務記録上は「残業ゼロ」にしていたが、スバル側は労災認定後に未払い残業代を認め、27年7月から1年5カ月間の約408万円の追加支給をしている。
 弁護士を通じて、男性の長男(13)は「さみしくて何も考えられない」、長女(11)は「私の心の傷は一生消えない」とのコメントを寄せた。スバルは「心よりお悔やみ申し上げたい。大変遺憾に思い、従業員の健康確保に一層の配慮をする」とコメントした。
 同社は24日、全社的に労働時間を調べた結果、約3400人に総額約7億7千万円の未払い残業代があったと明らかにした。
 
 
 
 

 

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