トヨタ技術者 超長時間残業と海外出張による過労死認定

2008年7月9日 朝日新聞

 トヨタ自動車(本社・愛知県豊田市)のチーフエンジニアだった男性(当時45)が急死したのは長時間労働による過労死だとして、遺族が労災認定を求めた申請について、豊田労働基準監督署は労災と認め、遺族補償年金などの支給を決めた。決定は6月30日付。

 遺族らが8日、会見して明らかにした。申請書などによると、男性は82年4月に入社し、02年ごろから新型車「カムリハイブリッド」開発に携わった。04年11月には開発責任者の「主査」となり、チーフエンジニアに指名された翌日の06年1月2日午前、自宅で虚血性心疾患のため死亡した。

 死亡直前の2カ月の時間外労働時間は、1カ月平均80時間を超えていた。北米での販売を控え、海外出張も繰り返していたという。

 遺族の代理人の弁護士によると、カムリハイブリッドは北米での人気が高く、06年3月の生産開始を目標に開発が進められていた。ところが、05年11月に技術面などでトラブルが発生した。また、06年1月の米デトロイトでのモーターショーに向けた出品準備に追われるなど、男性は精神的緊張を伴う業務を強いられていたという。

 男性の妻(46)は「夫は情熱を持って仕事に打ち込んでいたが、『人手が足りない。人材がいない』と話していた。つらい思いをしていたのは夫だけではないと思う。会社は夫をサポートして欲しかった」と話した。

 トヨタ自動車は「労基署の決定を真摯(しんし)に受け止め、労働災害の防止、社員の健康管理にいっそう努めていきたい」とのコメントを発表した。

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