Uber Eats配達員の商品投げ捨て事件に、ベテランからは「気の毒」の声も
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2019/10/17(木) 8:47配信bizSPA!フレッシュ
Uber Eats配達員の商品投げ捨て事件に、ベテランからは「気の毒」の声も
※画像はイメージです(以下、同じ)
飲食店の宅配代行サービス「Uber Eats(ウーバーイーツ)」の配達員らが10月3日、労働組合「ウーバーイーツユニオン」を結成したと発表した。
Uber Eatsはアメリカのウーバーテクノロジーズ(以下、Uber)が提供するサービスで、ユーザーが専用アプリを利用し注文をすると、配達員が飲食店へ商品を取りに行き、配達を行うものだ。
一方で、注文者と配達員間でのトラブルも起きている。2019年10月5日、Twitterにて、とある注文者の投稿が波紋を呼んだ。2016年のサービス開始当初から配達を行うベテラン配達員、“たけ”こと尾崎浩二氏(Twitter:@tktk2ub)に話を聞いた。
「商品投げ捨て事件」に見る課題
投稿者によると、商品は予定時間から約30分も遅れて到着し、スープが溢れるなど崩れた状態だったという。投稿者が受け取りを拒否したところ、マンションの共用部分に投げ捨てられ、投稿には破れた紙袋から無残にも放り出された商品の写真が添えられていた。
この件について、尾崎氏は「配達員が商品を投げ捨てた行為は、まったく肯定できるものではない」と前置きした上で、Uber側にも問題があると指摘する。
「投稿者がUberのカスタマーセンターに連絡した際の『配達員は個人事業主だから関与できない。自分で警察に連絡してほしい』という対応に怒ったお客さんがTwitterに書き込み、炎上につながった。今回のケースはUberのシステムや、サポート体制の根本問題が表面化したに過ぎず、この配達員にすべての責任があるとされてしまうのは気の毒だと感じます」
また、アプリ側の不具合やお客さんの入力ミスで、配達員の意志とは関係なく、すぐに商品を配達できないケースもあるという。
「目的地と違うところにピンが立っていることがあります。そうすると、あちこちまわって10分、15分があっという間に過ぎてしまう。あとは到着しても、シャワー浴びている、寝ているとかで、いくらインターフォンを押しても出てこなかったりすることもあります」
そのためUber側が定めた“10分ルール”というものがある。「配達場所に着いているのにお客さんと連絡が取れないとき、そこで10分間待機して、それでもまだ連絡が取れずに手渡せなかった場合は廃棄になります。この場合、配達員への報酬は入ります」(尾崎氏、以下同)。
Uber Eats配達員の“リアルな1日”
そもそも配達員はどのようなスケジュールで、何件の配達をこなし、平均的な収入はどのくらいなのだろうか。
「毎日30件ほど配達しています。アプリは朝8時〜深夜1時までオンライン(稼働状態)にできるため、人によって異なりますが、そのうちの8時間は働いています。1日1万2000円くらいは稼げるので、月20日間の稼働で24万円(1万2000円×20日)ほどは稼げます。それ以上稼いでいる人も多くいますが、平均的にはこれくらいだと思います」
Uber Eatsの公式サイトによると、合計の運転時間が12時間の上限に近づくと、安全機能によってアプリが一定間隔で通知を発信。さらに配達時間が上限に達すると、その後の6時間は自動的にオフラインになるという。
Uber Eats配達員の商品投げ捨て事件に、ベテランからは「気の毒」の声も
UberEats配達員の“たけ”こと尾崎浩二氏
1日に、より稼ぐコツとは?
また、配達の依頼が多くなるのは12〜13時のランチタイム、18時半〜20時半のディナータイムだが、配達員自身の食事や、休憩はどのように取っているのか。
「基本的にピークタイムを避けた15〜17時に一時的にアプリをオフラインにして、ラーメンなどをサクッと食べに行く人が多いです。私は時間がもったいないので、オンラインのままコンビニのパンやおにぎりで済ませることが多いです。注文が多い雨の日は、比較的注文が少なくなる時間帯にオフラインにして意識的に休憩を取ろうとすることもあります」
そんななか、尾崎氏には配達件数を効率よくこなすコツがあるという。
「お店でバッグにすばやく積み込むようにしたり、届ける際には、自転車なら近道を使うなどして急いで運ぶことで、分単位でロスを削ることを心がけています。また待機も依頼が入りやすいような場所でするようにしています。経験や研究によってだんだんわかります」
雨天時には「インセンティブ」
10月12日、13日にかけて日本列島を直撃した台風19号のように、荒天時の配達はどのようなものなのだろうか。
「今回のような大型台風など、明らかに危険な場合はUber Eats自体のサービスが一時的にストップされますが、普段、雨や風が強い日は基本的に依頼が増えます。また、配達員もスリップなどの危険から配達を控える人が多く、Uber側が『雨の日に10件配達したら1500円』などのインセンティブを付けてくれることがあるため、いつもの倍稼げたりする“稼ぎ時”と捉える人も多いです」
そんななかUber Eatsは10月1日より三井住友海上火災保険と共同で傷害補償制度をスタート。これまで対人・対物賠償責任保険を用意していたが、配達員の怪我に対する補償はなかった。配達員はUberと雇用関係になく、個人事業主として働くため、労働法による保護や社会保険の範囲外となるからだ。
しかし、この制度では、配達中の事故により配達員自身が傷害を負った場合、医療費や入院費などの「見舞金」が補償される(医療費は最大25万円、死亡した場合は最大1000万円)。この制度がスタートしたことについて、尾崎氏は「本当に嬉しい」と話す。
傷害補償制度は嬉しい半面、不信感も…
「Uber Eatsは3周年になるんですが、スタートからやっていた身としては、初期の段階から補償がないっていうのはわかっていた。ただ、個人事業主とは言っても実質は雇用のような形態なので、配達中の怪我の医療費は負担してほしいな、とも。配達員仲間とUberに働きかけようとしたり、良い保険を他の配達員に紹介したり、個人的にも動いたりしていたので、大きな一歩だと感じています」
Uber側が三井住友海上に保険料を支払うため、配達員に金銭的負担はないとされているが、不信感もあるという。
「2019年5月ごろ、配達員の間で『走行距離に対して、いつもより数十円配達料を安くされているような……』っていう声が1か月間ほど相次いだんです。ちょうどユニオンができるという話が出ていた時期だったのですが、結果的にUberはアプリの不具合と認めた上で謝罪をして、差額が後日振り込まれました。Uber側が勝手に報酬を操作できてしまうので、そこはユニオン含めて、配達員個人でも注意深く見ていく必要があると思っています」
傷害補償制度のスタートなど、配達員の労働環境改善に一歩踏み出したUber Eatsだが、まだまだ課題も残るようだ。“自由に働ける”というUberならではのメリットを残しつつ、配達員が安心して働ける環境が整えられることを願いたい。
<取材・文/鴨居理子>
bizSPA!フレッシュ 編集部