西川翔大 弁護士 働き方ASU-NET第30回つどい 「この働き方おかしくない!? 〜雇用によらない働き方を考える」 報告
弁護士 西川翔大 民主法律時報2019年11月号
2019年10月30日、エルおおさかで、NPO法人働き方ASU-NET第30回つどい「この働き方おかしくない!?〜雇用によらない働き方を考える〜」が開催されました。会場には労働組合、弁護士、民主団体などから60名を超える方々が参加しました。
まず、出版労連書記次長でジャーナリストの北健一さんから「雇用によらない働き方の現状と課題」と題してご講演いただきました。北さんは、日本のアニメーターやコンビニオーナーが最低賃金以下の収入で長時間労働を余儀なくされる実態のご報告を受け、政府が委託・請負契約などの雇用によらない働き方を「自由な働き方」と推奨している根拠に疑問を投げかけました。また、世界的には労働者概念を拡張して保護を図っていく潮流がある一方で、日本では現時点で労働者性により解決することは困難であると結論づけており、十分な保護に向けて議論できていない現状を紹介されました。北さんは、「保護があってこそ自由が花開く」、労働者としての保護に向けて、雇用によらない働き方の問題の「見える化」を進めていくことが重要であると説明されました。
また、脇田滋共同代表からは「雇用によらない働き方」が古くて新しい問題であり、昔から議論されてきたことが近年形を変えて再度議論されることになったことや、労働者概念から外すことは「使用者の究極の責任逃れ」であるという問題提起がありました。
これを受けて、ヤマハ英語講師ユニオンや朝日放送ラジオ・スタッフユニオンの当事者の方々、また清水亮宏弁護士から、組合としての取組みをご報告いただきました。ヤマハ英語講師の方からは、講師の一人が労基署に相談に行った際に「あなたは労働者ではない」と門前払いにされたことに端を発して何度も学習会を重ねて労働組合を結成し、現在組合員が拡大していくとともに会社との団体交渉も重要な局面を迎えていることを報告していただきました。朝日放送ラジオ・スタッフユニオンからは、会社の都合で派遣労働者とされ、一方的に解雇された5人で組合を結成し、労働委員会を闘ってきた経験についてご報告を受けました。清水弁護士からは、業務委託契約となっている塾講師が補講を無料で行ったことで違約金を請求された事件や保険外交員の給与天引きの問題、東京でウーバーイーツが労働組合を結成したことについてご紹介いただきました。
現在、働き方の実態に注目すると、保護を及ぼすべき労働者と同様の働き方であるにもかかわらず、契約の形式上「労働者ではない」という一言で保護されない人々が大勢います。今回、労働組合を結成することで、団結して大企業と対峙することができたというご報告を受け、「雇用によらない働き方」の問題こそ労働組合として団結することがより重要な闘い方の一つであることを学びました。 回の節目となる今回のつどいも、雇用によらない働き方の問題点を「見える化」していき、今後もより一層労働運動を盛り上げ、組合として団結していく重要性を確認することができた有意義なものとなりました。