神戸新聞2011/05/07
市役所の窓口を訪れた市民から暴言を浴びせられるなどし、PTSD(心的外傷後ストレス障害)を発症したとして、地方公務員災害補償基金兵庫県支部が、阪神間の自治体の女性職員を公務災害として認定していたことが分かった。市民の暴言と、窓口職員のPTSD発症との因果関係が認定されるのは極めて異例。
関係者によると、2008年、阪神間の市役所を訪れた男性が、窓口の女性職員の説明に腹を立て、職員の出身地域を中傷する言葉を繰り返し、さらに「インターネットに名前を載せたる。はよ死にや」などと暴言を吐いたという。
女性職員はショックを受け、その後、男性とのやり取りの様子を突然思い出す「フラッシュバック」に悩まされ、市役所に近づくと鼓動が速くなるなど出勤できない状態になった。
複数の医療機関でうつ病やPTSDと診断され、地方公務員災害補償基金兵庫県支部に、民間の労災に当たる公務災害の認定を求めて申請した。
精神疾患の認定基準は、公務に関連して大地震や洪水などの自然災害に巻き込まれたり、大規模プロジェクトなど困難な職務を命じられたりした場合が当てはまるが、同支部は女性職員のケースを「これらに類する異常な状態」と判断。「(男性の言葉は)脅迫ともとれる内容だった」とし、今年1月、公務との因果関係を認めた。
労災申請などの相談を受け付けているNPO法人ひょうご労働安全衛生センター(神戸市)は「窓口担当の職員と市民のトラブルは多いが、心の病で公務災害認定されたケースは聞いたことがない。画期的な判断だ」と評価した。
(紺野大樹)