毎週金曜の夜に恒例となっている原発再稼働反対のデモ。小雨の中、官邸周辺に集まる人の波の中に、鳩山元首相が登場し、参加者を激励した。
政権への揺さぶりとも取れるこの異例の行動に、民主党内からは批判も出ている。
金曜日の恒例となった、首相官邸前の反原発デモ。シュプレヒコールの嵐の中、姿を見せたのは鳩山元首相だった。
鳩山元首相は拡声器を使って「皆さんの声をもっともっと政治に反映していかなければならないと思っています」などとデモ隊を激励した。
その後、官邸に入り、藤村官房長官に対し、デモの主催者と野田首相が会う機会をつくるよう要請した。
抗議デモを利用してまで政権を揺さぶろうとする、元首相の前代未聞の行動に、党内の反応は冷ややかだった。
民主党の城島国対委員長は「総理もやられた方が、(デモに)出るというのは、仮に同じ意見だとしても、やっぱり私は、いかがなものかなという感じはします」と述べた。
こうした中、回を重ねるごとに勢いを増す官邸前デモ。20日も雨が降る中、デモ隊で埋め尽くされた。参加者の怒りをヒートアップさせたのは、活断層への懸念が拭えない中で実施された、大飯原発4号機の再起動。
ハウスポートの伊藤大介CEO(最高経営責任者)は「官邸前に行きたいんですけれども、今、歩いてきた通り、いろんなところに、別の方に誘導されてしまうんで、今、どこに向かってて、どこに到着するのかもちょっとわからないんですけど、やっぱりこれだけ怒ってる人たちがたくさんいらっしゃるんだと思います」などと話した。
神奈川県で不動産業を営む伊藤大介さん。
平塚市にある伊藤さんの会社。4月からデモに参加している伊藤さんに、社員も賛同し、そろってデモに向かった。ハウスポートの伊藤大介CEOは「この声をしっかり聞いて、ぜひとも原子力政策の見直しをしてもらいたい。もしこの『声』が『音』にしか聞こえないようだったら、野田総理にはもうお辞めいただきたいなと思っています」などと話した。
こうした声、官邸の主には届いているのだろうか。その野田首相は20日、九州北部豪雨の被災地を訪問した。
野田首相は「柔軟に、迅速に適応していきたいというふうに考えております。何かご要望とかありましたら、ぜひ、遠慮なく」と述べた。
熊本県の避難所となっている中学校のほか、大分・日田市、福岡・柳川市など、大きな被害を受けた地域を視察した。
福岡・柳川市で午後7時半すぎ、野田首相は「(鳩山元首相の行動について受け止めは?)まだ官房長官から話を聞いていませんから、コメントすることはできません。さまざまな声を聞いていきたいというふうに思います」と話した。
野田首相が、デモ隊も消え、静けさを取り戻した官邸前に車で戻ってきたのは午後10時30分ごろで、そのまま公邸の中へと姿を消した。.