【内藤尚志】大手企業で社員から「追い出し部屋」などと呼ばれる部署の設置が相次いでいる問題で、田村憲久・厚生労働相は8日、調査に乗り出す考えを示した。これまで「民間企業の経営には介入できない」と静観してきたが、退職を強要するといった違法行為につながるおそれもあるとして、実態の把握を急ぐことにした。
「追い出し部屋」などと呼ばれる部署には、低迷する事業部にいたり、希望退職への応募を断ったりした社員が配属される例が目立つ。おもな仕事は多忙な他部署への「応援」で、製品の箱詰めや議事録づくりといった「雑用」が多い。自分の転職・出向先さがしを命じられることもある。
このため、社員からは「社内失業者を集めて退職に追いこむのが狙いだ」との反発が出ている。一方、企業側は「新たな技能を身につけてもらい、新しい担当に再配置するため」などといい、退職に追いこむ意図はないと説明している。
これについて、田村厚労相は8日の閣議後会見で「強制的に意にそぐわない仕事をさせているのなら、実態調査をしないとならない」と述べ、調査が必要だとの考えを表明した。調査の手法や時期、対象はまだ決めていないが、「なるべく早く着手したい」(労働基準局)という。
厚労省はこれまでも、企業が大がかりな人減らしを公表すれば、企業の担当者から事情をきいてきた。経営難を理由とする社員の解雇は過去の裁判例できびしく制限されており、企業は社員に自主的な退職を促すことが多い。だが、しつこくやれば、裁判で違法な「退職強要」と判断される。
今回の調査も、企業への聞きとりが中心になるとみられる。どれぐらいの数の企業で設置され、どんな仕事を命じているのかを、まずは把握する。社員に退職を促していれば、「退職強要」となった裁判例を示し、注意を呼びかける方針だ。賃金の未払いや解雇の手続き違反などの違法行為があれば、是正するよう指導するという。