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毎日新聞 2015年06月08日
業務上の病気やけがで3年以上療養を続ける労働者を補償金を支払って解雇できる「打ち切り補償」制度を巡り、解雇された専修大元職員の男性(40)が地位確認を求めた訴訟の上告審判決で、最高裁第2小法廷(鬼丸かおる裁判長)は8日、「労災保険を受けている労働者でも、雇用主は打ち切り補償制度で解雇できる」との初判断を示した。長期療養中の労働者の解雇を従来より広く認める判断。
労働基準法は、業務上の疾病で労働者が療養している間は解雇してはいけないと定める一方、療養開始から3年経過後も治らない場合は、平均賃金1200日分の打ち切り補償を支払って例外的に解雇できるとしている。その条件として同法は「雇用主が療養費を負担している場合」としており、大学側が療養費を負担せず、労災保険を受給していた男性の解雇が許されるかが争われた。
小法廷は、打ち切り補償の目的を「雇用主の負担を軽くする制度」としたうえで、「労災保険の給付は雇用主の負担に代わって行われている。雇用主による負担(で療養するケース)と扱いを別にすべきではない」と指摘。解雇を無効とした1、2審判決を破棄し、雇用主側の解雇権乱用があったかどうかを判断する必要があるとして審理を東京高裁に差し戻した。
男性は1997年、大学の職員に採用されたが、腕から全身に痛みが生じる「頸肩腕(けいけんわん)症候群」と診断され、2003年ごろから欠勤を繰り返すようになった。07年に労災認定されて療養していたが、大学側は11年に打ち切り補償金約1630万円を支払って解雇した。【山本将克】
◇「差し戻し審では治療に協力する判断を」
判決言い渡し後、男性は東京都内で記者会見し「療養者の解雇を認める判決だ。差し戻し審では治療に協力する判断がほしい。これでは労災申請したいと言えなくなる」と話した。
弁護団によると、業務に伴う疾病の治療費は多くの場合、雇用主の負担ではなく、男性と同様に労災保険でまかなわれているという。小部正治弁護士は「労災保険の受給中は解雇できないとされてきたが、法律の解釈を180度変えた。お金を払うから辞めてくれとなりかねない」と最高裁の判断を批判した。
ただ現実には、長期療養者の中には、働きながら療養を続けたり、自発的に退職したりする例も多いことから、今回の判決を受けて直ちに解雇が続発する可能性は低いとの見方もある。
専修大は「主張が認められた」とコメントした。【山本将克】